ドイツの手帳メーカー、X47&X17がこの秋から日本に本格進出する。「ブックバイブックシステム」という独自の仕組みが特徴だ。同社のマティアス・ビュットナー社長のコメントを交えて紹介しよう。
ドイツの手帳メーカー、X47&X17がこの秋から日本に本格進出する。数多くのメーカーが多種多様な製品を発売している日本の手帳市場に、どのように参入・展開していくのか。X47&X17の商品ラインアップとその戦略を、同社のマティアス・ビュットナー社長のコメントを交えて紹介しよう。
日本でも本格的に販売することになったX47&X17の手帳は、本国のドイツでも2009年に全シリーズで約1万冊を売り上げたヒット製品だ。最大の特徴は「ブックバイブックシステム」と呼んでいる、システム手帳のリング替わりになる仕組み。
同社の手帳ブランド「X47」でも採用しており、複数の冊子をカバーにはさみこめる。冊子をはさむのに使われているのが専用の金具。具体的には、冊子とカバーの双方に着脱用の金具(=スプリングバーと呼んでいる)を装備した。全体を薄く押さえつつも、冊子(リフィル)をきちんとはさみこむ。
リフィルが交換できるタイプの手帳としては、システム手帳とモジュール型手帳があった。前者は開閉式のリングに記入用紙やポケットなどをとじて利用するタイプで、リング径の分だけリフィルをとじることはできた。ただ、使う人によってはリングの存在がうっとうしく思われることもあった。
モジュール型手帳は、革などのカバーの内側に複数種の冊子を収めるタイプだ。デザインフィルのトラベラーズノートや野口悠紀雄氏の「超」整理手帳などがその代表だが、冊子が3冊以上になるとどうしてもかさばりがちになった。
ブックバイブックシステムは、従来のシステム手帳のようにリフィルをきちんとはさみつつ、モジュール型手帳のように全体を薄く保っている。
この仕組みの採用によって、リングが邪魔で書きにくかった従来のシステム手帳に比べて、手帳の記入面が47%増えたという。X47という商品名はこれにちなんだものだ。
特徴は紙にもある。従来のシステム手帳はどうしても本体全体が重くなる傾向があった。X47&X17ではこの点も重視し、軽い紙を採用している。具体的には、A5サイズのリフィルの紙は80グラム毎平方メートル、A6サイズのリフィルの紙は60グラム毎平方メートルの厚みになっている。人によっては「薄すぎる」と感じる人もいるというが、A5サイズと同様の80グラム毎平方メートルだとリフィルの厚みからカバーにきちんとおさまらなくなってしまうのだ。「見た目のスマートさやコンパクト感を重視しているので、紙の厚みは重要」(X47&X17)
日本での展開は2シリーズ3サイズだ。まずX47(本体価格8400円〜4万4100円)。これは上述の着脱用金具をもつシステムで、シカ革を筆頭に、カリプソ、ガウチョなど牛革の各色(レッド、ブラック、ブラウン)を用意する。いずれもドイツ製またはドイツ国内で加工したものである。リフィルは、マンスリー、ウィークリー、デイリー、それに無地、方眼、横罫などを提供する。
次にX17(本体価格1800円〜10500円)。これは以前の記事でも紹介したもので、いわばX47の普及版的な存在だ。リフィルをはさむ部分はX47が金具であるのに対し、ゴムひものような伸縮性のリングを採用している。なおX17用とX47用のリフィルに互換性はない。X47、X17の各シリーズ(バインダー、リフィル)ともA5、A6、A7の3サイズを用意する。
同社のマティアス・ビュットナー社長は、日本の手帳市場をどう見ているのだろうか。
ビュットナー社長 X47シリーズにとって日本は大変魅力的な市場だと考えています。日本人は、時間が大きな価値を持ち、時間管理について慎重でなければならないことを知っているようです。ですので当社としては、日本市場がドイツの市場と同じくらい大きく、大切なものとして考えています。
誠 Biz.ID 2009年にドイツでは1万冊を販売したというが、日本の初年度の販売数目標は? またそれをどれぐらいのスパンで達成する予定か。
ビュットナー社長 X47シリーズ合わせて初年度で1000冊が目標販売数。Amazon.co.jpやわたしたちのWebショップを改良し、商品を提供することができれば、この数字は達成可能だと考えています。8月以降、当社の日本語公式ブログを開設し、そこではドイツ語ブログ同様にわたしが提唱する「時間管理術」や「自己管理術」について公開したいと思います。
今後3年はX47手帳を3000冊、個人顧客に向けて販売する予定です。また法人顧客も獲得し、さらに多くのX47手帳を日本の皆様にご提供できれば、と考えております。なお、ドイツ国内ではすでに法人向けにも実績があります。例えば、ドイツの時計メーカーであるランゲ&ゾーネでは、社員がお得意様に贈答するための特別製品として、X47を採用しました。
誠 Biz.ID 日本では最近プライベートとビジネスを別々の手帳に記入するような“2冊持ち”の利用者も増えたが、ドイツと日本での手帳の使われ方に違いはあるか?
ビュットナー社長 ドイツの手帳は、1人につき1冊が一般的。プライベートよりもビジネスの場で使われることが多いです。数冊の手帳を同時に使う人は、大変めずらしいことですね。
誠 Biz.ID 今後のリフィル展開は? とくに特徴のあるリフィルはどんなものを用意するのか。
ビュットナー社長 X47&X17のリフィルは予定をただ書き込むだけのカレンダーよりも多くのことを計算して作っています。例えば、デイリータイプとウィークリータイプ(バーチカル)のリフィルは「時間管理」を重点に設計しています。それらのリフィルではページ上部は予定の記入に、ページ下部はデータレジスター(※)のようになっていて、具体的な行動などを記入できます。
俗にホライゾンタル式(またはセパレート式)と呼ばれているタイプのウィークリープランナーリフィルでは、X47が提唱するの時間管理術である「7×7メソッド」(※)を採用しました。教職員や学生の予定を書き込むため、といったような使用法に最適です。
当社のあるドイツ・ザールラント州にある時計メーカーであるニブレル(NIVREL)とのコラボレーションリフィルである「タイムサークル」(X47用)も特徴あるリフィルの1つだと思います。これは、ニブレルの時計の文字盤をデイリープランナーにしたものです。
誠 Biz.ID 日本の休日に対応したダイアリーの登場予定は?
ビュットナー社長 すぐにでも日本の休日に対応したダイアリーを作ることが可能ですが、製品としては2011年5月以降の納入を考えています。
誠 Biz.ID 今後「スケジューラーとしての手帳はiPhoneなどのスマートフォンに取って代わられる」という可能性もありますが、手帳はこれからどうなっていくべきですか?
ビュットナー社長 おっしゃるとおり、今後紙媒体の手帳市場は縮小傾向にあるだろうと予測しています。今後15年間で現在の手帳市場よりも約15%程度は縮小するのではないでしょうか。しかしX47シリーズのような「高級感ある、ハイクラスな」手帳購買顧客層については拡大する可能性もありますよ。ドイツでも日本でも同じだと思いますが、今後さらに階層の二極分化が進み、高級手帳の購買顧客層に関していえば増加することもあり得ます。いくら不況であるからといって、高級車産業が破綻する、ということは考えにくいですからね。
X47とX17は、8月12日から丸善(丸の内店)の手帳フェアにも並ぶ予定だ。多種多様な手帳が存在する日本市場にあって、X47シリーズの構造とコンセプトがどのように受け入れられるのだろうか。ドイツ手帳の展開が今から楽しみだ。
独自のブックバイブックシステムを採用するシステム手帳「X47&X17」を誠 Biz.IDの読者にプレゼントします。
エントリーモデルの「X47 スリムラインA6」を抽選で5人にプレゼント。プレゼントのセット内容は、以下の通りです。
応募方法:X47&X17の応募フォームよりご応募ください。締め切りは8月いっぱいまで。なお発送をもって発表にかえさせていただきます。
アスキー勤務を経て独立。手帳やPCに関する豊富な知識を生かし、執筆・講演活動を行う。手帳オフ会や「手帳の学校」も主宰。主な著書に『手帳進化論』(PHP研究所)『くらべて選ぶ手帳の図鑑』(えい出版社)『システム手帳新入門!』(岩波書店)『システム手帳の極意』(技術評論社)『パソコンでムダに忙しくならない50の方法』(岩波書店)など。
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