実際の記帳はこんな作業を延々と続けることとなる。子供のころに毎日予習復習ができた人は日々の経費を入力すればいいが、試験前に慌てて勉強した人やサラリーマン時代に旅費精算を1カ月分まとめてやったタイプの人は、たまりにたまった領収書をまとめて入力することになるだろう。1年分の領収書の入力は気の遠くなる作業だ。
筆者は予習復習ができなかった人種なので、まとめて入力をしている。独立したころは毎月入力しようと思ったが、挫折した。その後は10月までの売り上げ、経費などをまとめて入力。11月、12月は売り上げと経費を予測しておおよその税額と手元の現金を把握する。
もうかっていれば12月に年払いする小規模企業年金の掛金を多めにし、さらに仕事で使いそうなものを買って節税対策。住民税、国民健康保険は表計算ソフトで別途算出できるようにしているので、10月に締めた段階で翌年に納める所得税、住民税、国民健康保険のおおよその金額は分かるようにしている。年が明けてから11月、12月分の記帳をして確定申告という方法に落ち着いた。
ところが2012年(2011年分)は3月上旬に初めて入力を開始した。2日間で9割くらいの入力を終え、残りはこの原稿とその後の出張を済ませてから仕上げに入り最終日に提出の予定だ。これで4年連続確定申告最終日の提出となる。実に情けない。
毎月の売り上げと入出金は表計算ソフトで管理している。6年目ともなるとある程度もうかり具合で納税額が多いか少ないかは想像がつく。もうかっていない→節税対策は不要→確定申告までに入力すれば大丈夫、というのが今年の言い訳だ。加えて税金の連載は毎年執筆しているが、この冬は節電の連載原稿を同時に執筆したので忙しかったという言い訳を自分自身にしている。
さて、お薦めできないが筆者のようにズボラな人向けの入力方法を紹介しよう。多くの税金ハウツー本では領収書は日付ごとにまとめて……と書かれているが、筆者は科目ごとにまとめた方が入力効率が上げられると考えている。
たまりにたまった領収書を水道光熱費、接待交際費、出張旅費、ガソリン代などに分け、複数枚用意した封筒に入れる。例えば電気代の1月分を簡単取引入力を使って記帳する。自動的に借方、貸方に仕訳がされるので、この仕訳をコピー&ペーストで1年分を作成する。具体的には1月分を行コピーしたら[Ctrl]+[Y]を11回連打する。
2月分の日付欄を修正し、[↓]キーで3月分に移動し日付を修正。これを12月まで繰り返す。次に2月分の金額欄に移動し領収書を見て金額を修正。[↓]キーで3月分に移動し金額を修正。こちらも12月まで繰り返せば電気代の仕訳は終了だ。1つ1つ簡単取引入力を使うより相当短時間で入力できる。
このことは全体を通じても言えることで、電気代、飲食代、備品代と違う科目を日付順に入力するよりも同じ科目を大量コピーして日付と金額を修正した方が圧倒的に効率を上げることができる。
知人からの2つ目の質問はクレジットカードで購入したときの仕訳方法だ。筆者の本音は「現金で買ってもカードで買っても納税額は同じだから現金で買ったことすれば処理は簡単」なのだが、一応律義な仕訳方法から説明しよう。
例えば月末締めの翌々月10日引き落としのクレジットカードを使用した場合。3月12日に購入したものは5月10日に銀行口座から引き落とされる。ここでは個人用のカード、業務用のカード、個人の銀行口座、業務の銀行口座とかは無視する。
3月12日の購入の仕訳は以下のようになる。
借方 | 貸方 | 摘要 |
---|---|---|
消耗品2000円 | 未払金2000円 | マウス |
または、
借方 | 貸方 | 摘要 |
---|---|---|
消耗品2000円 | 事業主借2000円 | マウス |
5月10日に銀行口座から引き落とされた場合の仕訳は、
借方 | 貸方 | 摘要 |
---|---|---|
未払い金2000円 | 普通預金2000円 | クレジットカード引き落とし |
または、
借方 | 貸方 | 摘要 |
---|---|---|
事業主借2000円 | 普通預金2000円 | クレジットカード引き落とし |
要するに、購入段階と支払い段階で2度入力をすることになる。普段クレジットカードを多用している人は、作業量が2倍になるということだ。……うーん面倒くさい。
ここで登場した事業主借という言葉の説明をしよう。個人事業主の場合、事業のお金と個人のお金をキッチリ分けることは難しい。自宅と事務所を分け、クルマも事業専用車を用意、携帯電話も別にして、銀行口座、クレジットカード、持ち歩く財布も2つ……と完璧に分けない限り必ず混じってしまう。
そこで登場するのが事業主借という言葉だ。個人の口座から財布に入れた現金で備品などを購入した場合は、事業主側から見て個人のお金を借りているので事業主借という。逆に事業用の口座から個人の支出にあたる出費をした場合は事業主貸となる。
この事業主借を拡大解釈すると個人の現金、個人の銀行口座、個人のクレジットカードで買ったものは全て事業主借として処理することが可能だ。事業用の口座(屋号名の口座)から事業主貸として引き出したお金は全て個人のお金として、事業用の現金はないという考えれば現金出納帳も不要、実際に独立した人は分かると思うが個人口座の残高を合わせる大変な作業も不要となる。さきほどの仕訳も引き落とし時の処理は不要となる。具体的な仕訳は以下の通り。
借方 | 貸方 |
---|---|
消耗品2000円 | 事業主借2000円 |
借方 | 貸方 |
---|---|
消耗品8000円 | 事業主借8000円 |
借方 | 貸方 |
---|---|
水道光熱費9000円 | 事業主借9000円 |
貸方は全て事業主借、個人のお金で支払ったという考えだ。イメージはサラリーマンが会社の備品を立替払いで購入したときに近い。現金だろうが、デビッドカードだろうがクレジットカードだろうが、会社からすれば関係ない。クレジットカードの引き落としの日に「引き落とされました」と経理にお金をもらいに行くことはないだろう。事業主借はそのまま累積し決算で自動的に元入金(個人から事業への出資金)としてまとめて処理される。この方法にすれば現金と個人口座の管理は不要となり作業量は激減する。
実際に入力作業を行うとどう仕訳していいか分からないケースは多々ある。そんな時に役に立つのが仕訳アドバイザーだ。例えばクルマを買った場合は複雑な仕訳をしなければならない。仕訳アドバイザーで検索すると以下のように仕訳例が表示される。
仕訳アドバイザーで分からなかった場合はインターネットで検索すれば、多くのケースは仕訳方法が見つかるはずだ。それでも分からなければ税務署に電話すれば親切に教えてくれるだろう。
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