スマートフォンを使って手書きメモをデジタル化できる文具が今以上に普及したとき、どこまでをデジタル化するか、アナログとデジタルの境界線について議論してみました。
前回は、文房具やガジェット好きの6人に、昨今話題となっているスマートフォンと連係するグッズ“スマート文具”を普段どのように使っているか、こだわりの部分を紹介してもらいました。
スマート文具の登場で、これまでよりも容易に手書き文字をデジタル化できるようになりました。一方で、あえて手書きのオリジナルのまま残しておきたいものもありますよね。今回はこれからのスマート文具とのかかわり方として、デジタルとアナログのすみ分けについて座談会参加者の考えを聞いてみました。
まずは座談会の統括として、スマート文具の登場で変わったこと、また今後スマート文具はどうなるかという話題から始まります。
高畑さん 「SHOTNOTE(ショットノート)」などの、紙をスマートフォンで撮影してデジタル化する製品が出てきたことで、手書きのアナログデータをデジタル化するハードルが下がりましたよね。さらに「KYBER」などはテキスト部分をOCR(光学式文字読み取り装置)処理してテキストデータにしてくれる。つまりスマートフォンのおかげで、入力デバイスと出力デバイスの組み合わせが増え、出力はデジタルデバイスでも入力部分はどの紙にどんなペンで書いてもOKという、いい意味で自由度が広がりました。
舘神さん 技術屋さんからすれば、その自由度の部分をどう補完するかが腕の見せ所ですね。
高畑さん 新しく出た「スキャンノート」(各ページを切り離せるノートで、切り取り後にスキャンできるというもの)は「ノートは切り離せる、スキャンできる」ということを提唱しています。定着するかはまだ分かりませんが、こうしたスマート文具が私たちに新しいライフスタイルを示唆しているわけです。
美崎さん 確かにノートを切るという発想は一般的ではないですからね。しかしスキャンノートは、切った後はどうするのですか?
土橋さん ドキュメントスキャナ「ScanSnap」などでスキャンした後ってことですよね? ファイリングするか捨てるかじゃないでしょうか。
美崎さん ファイリングの方法は?
竹村さん それこそキングジムのファイリング製品を使うという方法もありますが、最近ではスキャンデータを「Evernote」などで管理している人もいますよね。
高畑さん そうですね。現物で保管しておきたい人は、土橋さんのように手元に取っておくなど。
土橋さん ノートを裁断しないでばらしたり、場合によっては戻せるのはうれしいですね。
高畑さん そうだ、土橋さんの話で思い出しましたが、リヒトラブがツイストリングノートを出していますよね。僕はそれ使っているんですよ。これもスキャン後に元に戻すという使い方ができる。元はそれを想定して作ったものではないのでしょうが、今後こういうタイプの(一度バラして元に戻す)製品があってもいいと思いますね。
美崎さん 確かにそうですね、戻せないと価値がないのは一理あります。例えば歴史的な人物が書いたものって、あれがデジタルデータになって博物館にあっても、恐らくありがたみがないですよね。現物の価値はずっと変わらないと思います。
高畑さん 先ほども言いましたが、スマート文具が出てきたことで簡単にデジタル化できるようになった今、だからこそ僕らはデジタル化すべきもの、しちゃいけないものの線引きをもう一回考えなくちゃいけないですね。
美崎さん そうですね、でも一方で事前に線引きしておけない(判断できない)場合もあるんですよ。だって例えばこの対談がきっかけで日本の文具が変わったとしたら、今ここで適当に何か描いた紙などがものすごい価値があるのになるかもしれないわけでしょ?
舘神さん 文具王の指紋が付いたメモ用紙が! とかね。
美崎さん そう、でもそれは今判断できることではないし、今後それをデジタル化したものに価値があるかも分からない。
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