経費を“増やす”方法――個人事業主向けの節税対策を考える「大増税」時代に備えて(2/6 ページ)

» 2012年12月05日 11時00分 公開

経費の入力は膨大、どんなソフトを使うべきか

 売り上げの集計は作業量が少ないためExcelを使用しているが、経費の入力は膨大な作業量となるため青色申告ソフトを使用している。小売業、ネット通販など毎日売り上げが立つような仕事をしていて、こまめに入力する人は最初から青色申告ソフト入力した方がいいだろう。

 独立したばかりの人は青色申告ソフトと言われてもピンと来ないだろう。詳細は後ほど解説するが、筆者のように簿記、会計などの知識がなく個人事業主になった人には必須のソフトだ。製品選びについても簡単に触れておこう。

 筆者は独立後、店頭でパッケージを見て、なんとなく「やよいの青色申告07」を購入した。使って気付いたのは、決算のデータを継承するには同じソフトを使い続ける必要がある、ということだ。加えて筆者のように年に数日しか使わないと操作方法なども忘れてしまうため同じものを使い続けた方が無難だ。なんとなく買った「やよいの青色申告」を使い続けた方がいいのか、他社製品に乗り替えた方がいいのかと疑問を感じた。

 そこで筆者は画策した。翌年、当時の編集長に「青色申告ソフトの比較記事をやりましょう」と持ちかけ数社の製品を試用する機会を得た。結果、筆者のように会計に疎い人に最適なのは、なんとなく選んだ「やよいの青色申告」だった。振り返ると、それがきっかけとなり現在まで税金関係の記事を執筆し続けている。人生は何が起こるか分からないものだ。

 その後もフリーソフトなども含め、いくつかのソフトを試用してきたが、複式簿記がスラスラと記入できない、損益計算書が自力で書けないという人には「やよいの青色申告」をお勧めしたい。ちなみに昨年の「弥生12シリーズ」の実績は本数シェア53.3%、金額シェア69.4%と圧倒的1位となっている。

やよいの青色申告13

 経費の総額を集計するだけなら電卓で手計算しても結果はでるが、おそらくこの記事の読者なら手計算ではなくPCを使用してExcelで集計するだろう。しかし、筆者のように日々の売り上げや仕入れがない業種でも、プリンターのインクを買った、出張した、クライアントと食事をした、通信費、水道光熱費、ガソリン代を払ったなど1000件近い入力が必要となる。膨大な入力作業を2度行うのは効率が悪い。それなら最終的な確定申告につながる青色申告ソフトに入力するべきだ。

 とは言え本当に簿記の知識もなく青色申告ソフトが使えるか不安な人もいるだろう。筆者自身、ある程度は税金の勉強が必要で誰でも簡単にできるとは思っていない。「やよいの青色申告13」など、いくつかのソフトは事前に体験版をダウンロードできるので購入する前に確認すればいいだろう。

 売り上げの集計を済ませ、領収書の入力も行い、家事按分などもして経費の集計もできた。さらに第1回の記事で紹介した配偶者控除、扶養控除、社会保険料控除、生命保険料控除などの各種所得控除も集計したらいよいよ節税だ。


経費を増やそう

 「経費を増やせば節税になる」と言っても、寒くもないのに暖房をして電気代を増やすとかは論外。あくまで事業に有効な支出をして納税額を減らすことが大切だ。実際の例で節税を確認してみよう。

 売り上げ、経費、各種所得控除を計算し今年の課税所得が400万円になったとしよう。そこで年末に仕事用のノートPC、デジカメなど20万円の支出をすると課税所得は380万円になる。所得税の税率は以下のとおりなので、

所得税の税率
課税所得金額 税率 控除額
〜195万円 5% 0円
195万円〜330万円 10% 9万7500円
330万円〜695万円 20% 42万7500円
695万円〜900万円 23% 63万6000円
900万円〜1800万円 33% 153万6000円
1800万円〜 40% 279万6000円

 課税所得が400万円と380万円の場合は、

  • 400万円×20%−42万7500円=37万2500円
  • 380万円×20%−42万7500円=33万2500円

 380万円の納税額が4万円減ることになる。住民税は税率が10%なので2万円の減額、国民健康保険は地域差があるので金額の算出は省略するがここも減額できて、20万円の支出で納税額は6万円強減ったことになる。約3割引で買った気分……。実際、かなりうれしい。

 では来年の1月に同じものを買ったとしよう。その年が終わってみたら売り上げが減り最終的に課税所得は170万円となった。逆算するともしノートPCなど20万円の支出をしなければ課税所得は190万円となったはずだ。計算すると以下の通り。

  • 190万円×5%=9万5000円
  • 170万円×5%=8万5000円

 所得税で1万円、住民税で2万円(人的控除差額による調整控除はひとまず無視)、国民健康保険の減額を合わせても3万円強の節税にしかならない(ここでは復興特別所得税も無視した)。

インフレ時代の確定申告

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

注目のテーマ