連載
» 2012年12月05日 11時00分 公開

経費を“増やす”方法――個人事業主向けの節税対策を考える「大増税」時代に備えて(4/6 ページ)

スーツは普段も着るから経費じゃない?

 そもそも税金はグレーな部分が多い。脱税のニュースなどでも見解の相違という言葉を耳にすることは珍しくない。筆者も独立直後に税務署の相談会でスーツは経費にしていいかと質問したことがある。筆者もオッサンだが、筆者からみてさらにオッサンであった税務署の担当者は「スーツは普段も着るから経費じゃない」と回答した。内心、プライベートでスーツは着ないぞと思ったが領収書は破棄した。

 その後、知り合った税理士の人に同じ質問をしたら「仕事でしか着ないなら経費にできる」と回答。今思えば税務署のさらにオッサンの担当者は、親戚の集まりにも背広で来そうなオッサンだった。これも見解の相違だ。ちなみに本記事を監修した税理士の森裕昭氏によると「(スーツは)経費にならない」とのことである。

 メガネは経費にならないと聞くが、ブルーライトから目を守るJINS PCはPCで仕事をする人なら経費になるかもしれない。個人タクシーの運転手に接待交際費はないように思えるが、町内会で知り合った病院の偉い人と飲んで待合室に電話番号が掲載され送迎の仕事が増えれば接待交際費はありかもしれない。仕事に関係しそうな出費だと自分なりに判断できれば経費として考えればいいだろう。

 東日本大震災の復興予算で税務署の耐震工事をするなど流用問題が話題になっている。筆者の感覚ではNGだが、問題ないと判断する人もいるようなので、見解の相違は世の中に多そうだ。関係ない話だが、流用の批判を受け今後は凍結になったが、既に使ってしまった復興予算を返却するという話はないようだ。隣の席の人のパンを食べて、食べちゃったから返さないってのはありだろうか。普通は食べないし、万が一食べたとしても買って返すか代金を自分の財布から出すと思うが、それは役人の常識からは外れているのだろうか。

控除を増やそう

 経費と同様に各種所得控除を増やすと節税になる。各種所得控除の多くはサラリーマンと同じだが、個人事業主ならではと言える部分もあるし、青色申告をしている人だけの控除もある。

 配偶者控除、扶養控除などは全てサラリーマンと同じだ。前回の記事を参考に確定申告時に漏らさないようにしよう。子供など扶養家族に関しては青色申告ソフトを使えばサラリーマンの「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」より簡単だ。誕生日を入力すればソフトが自動的に判断して正しい控除額を計算してくれる。

やよいの青色申告12では誕生日を入力すれば控除額を自動計算できる(平成23年分の申告書)

 PCを使っているので今どき当たり前の機能だから誰も驚きはしないだろう。そう考えると「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」も誕生日によって記入する欄を変更するのは時代遅れだ。扶養家族を全て記入して誕生日から処理する側が自動的に判断すればいい。

 個人事業主ならではの視点で控除による節税を考えてみよう。個人事業主といってもさまざまな業種があり一概には言えないが、筆者はサラリーマンより安定性がないのが個人事業主の1つの特徴だと思っている。経費による節税でも書いたように、もうかった年に経費を使えば節税効果は高くなる。それは控除でも同じだ。

 例えば、新たに医療保険の契約を年末にしたとしよう。年払いの契約(12月の引き落とし)にすれば、保険の期間は12月から翌年の11月分が対象でも、その年に支払った1年分の保険料は控除の対象となる。翌年、業績が落ち込んだら月払いに変更すればその年は12月の1カ月分だけを支払い、控除の対象も1カ月分だけとなる。翌々年はもうかったなら年払いに切り替えれば1月から11月まで月払いした保険料に年払いの12カ月分を足した23カ月分の保険料が控除の対象となる。

 実際に月額3500円の医療保険を契約した場合の控除額をみてみよう。2012年は年払いで1年分の4万2000円を支払い、2013年は1カ月分の3500円、2014年は23カ月分の8万500円を支払ったとすると、もうからなかった来年の支払額は3500円、もうかった再来年の支払額が8万500円となる。

医療保険の控除で節税
年(支払方法) その年の支払額 介護医療保険料の控除額(所得税/住民税)
2012年(年払い) 4万2000円 3万500円/2万4500円
2013年(月払い) 3500円 3500円/3500円
2014年(年払い) 8万500円 4万円/2万8000円

 実はこれを記事ネタにするため自分の保険で試してみようと思った。サラリーマン時代の先輩で横浜でソニー生命の所長をしているNさんに相談に乗ってもらったところ、理論上は可能だが筆者の保険が6月の契約なので、年払いへの切り替えは6月にしかできないとのことで断念した。これから契約する人は年末に契約して支払い方法を切り替えるのは節税方法として有効だろう。とは言え業績の浮き沈みがないと節税効果が出ないので実際には微妙な感じだ。

 先輩からアドバイスをいただいた、もう少し有効な節税方法も紹介しよう。筆者がソニー生命で契約している生命保険は一般生命保険が年額約11万円、医療保険が年額約5万円(他社の保険もあり)。現在のままなら旧制度なので一般生命保険料控除で5万円の控除となる。

 医療保険は13年前の契約で新規契約は年齢条件的に不利。古い保険なので現在加入の医療保険は入院5日目から給付となる。これを1日目から給付の特約を付けると月額340円アップ。一時金として1万7355円が必要とのこと。特約を付けることで新制度となるので介護医療保険料控除の対象となる。

 保険料は年額4000円ほど上がるが、介護医療保険料控除が所得税で3万3500円、住民税で2万7500円くらいになるので、所得税の税率が20%の人なら6700円+2750円=9450円の節税となる。保険料の増額、一時金を考えても支払期間が長い人は得することになる。この節税は個人事業主だけでなくサラリーマンでも有効だ。

インフレ時代の確定申告

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

注目のテーマ