経費を“増やす”方法――個人事業主向けの節税対策を考える「大増税」時代に備えて(3/6 ページ)

» 2012年12月05日 11時00分 公開

経費を増やす方法

 「もうかる=課税所得が増える=所得税率が上がる」ので、もうかったときに支出をした方が節税効果は高くなる、ということだ。もちろん安定してもうかっていればいつ買っても同じ、毎年業績が上がっていれば後で買った方が得な場合もあるが、いつ業績が急降下するか分からないので、もうかっているときに支出をした方が得になると考えたい。

 今年独立してそこそこもうかったとしよう。年が明けてから収支を確認してもうかったことに気付く。納税額を知ってビックリ。節税したいと思っても時すでに遅しだ。まさに筆者自身がそうだった。確定申告の期限は3月だが、今集計しても先送りしても作業量は変わらない。すぐに作業を始め必要であれば年内に節税を考えたい。

 具体的に経費を増やす方法を見て行こう。一般的な経費の科目をみると、荷造運賃費、水道光熱費、旅費交通費、通信費、接待交際費、修繕費、消耗品費、地代家賃などがある。荷造運賃費は宅配便などが対象となるが、用もないのに何かを送ることはないだろう。水道光熱費も無理に電気や水道を使っても意味はない。節税するならば、来年以降の有効な投資となる出費を考えるべきだ。

 例えば年末のあいさつ。遠くの取引先に手土産を持参すれば、旅費交通費と接待交際費を支出することになる。来年以降の良好な関係維持につながれば有効な投資だ。税金の勉強をするための本(雑費)を買ったり、得意分野や新規参入を目論む分野の専門書を買ったりするのも有効だろう。

 課税所得が330万円〜695万円の人なら所得税の税率が20%、住民税が10%で計30%となる。経費が1万円増えれば3000円の節税、10万円増えれば3万円の節税が目安となる。使う経費が多ければそれだけ節税できるということだ。小さな経費も積み上げれば大きくなるが、やはりある程度金額が高いものを購入した方が節税の近道だろう。

 簡単に節税をするなら消耗品費を増やすのが一般的。消耗品費というと消耗するもの=プリンターのインクなどを思い浮かべる人もいると思うが、ここでいう消耗品費は10万円未満または使用可能期間が1年未満の少額減価償却資産だ。ザックリ言えば10万円未満の備品が対象となる。最新のタブレット端末など、必要であれば年内に購入すれば来年納める税金が減ることになる。

車などの減価償却はどうする? 特例も考慮すべし

 ガッツリもうかったからPCとかチマチマしたものじゃなく、車を買ってドーンと節税をしたいという人もいるだろう。だがそうは簡単にいかない。10万円以上のものは固定資産として処理をする。例えば車は長期に渡って使用するので、耐用年数に分割して経費とする。これを減価償却という。

 例えば360万円の車を購入した場合、360万円が買った年の経費になるわけではない。車は耐用年数が6年なので、年間60万円ずつを6年間に分けて経費となる。12月にあわてて購入しても12月、1カ月分の5万円だけが今年の経費となる。耐用年数はテレビは5年、PCは4年、カメラは5年などと定められている。

 減価償却には特例がある。10万円以上20万円未満の資産は一括償却資産として3年で均等に割って償却することができる。15万円のテレビを仕事用に購入した場合、通常は5年で償却する。12月に買った場合1カ月分の2500円が経費となり、数百円の節税にしかならない。一括償却資産として3年で均等に割って償却する場合は12月に購入しても3分の1の5万円を経費にできるのだ。

 さらに青色申告している個人事業主なら10万円以上30万円未満の資産は「少額減価償却資産の取得価額の必要経費算入の特例(措置法28の2)」により、その年に全額経費として処理することが可能だ(合計額に制限あり)。12月にあわてて24万円のデジタル一眼レフカメラを買っても5年償却なら1カ月分の4000円しか経費にならないが、この特例を使えば12月に購入しても24万円を経費にすることができる。

 業績の浮き沈みが激しい人は、減価償却による節税効果がもうかった年ともうからなかった年で大きくブレる。「少額減価償却資産の取得価額の必要経費算入の特例(措置法28の2)」によりもうかった年=節税効果が大きい年に経費にできるのは大きなメリットだろう。

 この「少額減価償却資産の取得価額の必要経費算入の特例(措置法28の2)」は2年ごとに延長され、現在は平成26年の3月までとなっている。恐らくそれ以降も継続されると思われるが、不安定な時代を考えると少々不安がある。この特例をあてにして30万円未満の資産を購入するときは継続されているか確認した方がいい。

 これから年末までに経費を増やす方法は上記のような方法が一般的だが、通年で考えると小さな経費を積み上げることも有効だ。例えば自宅から離れた大きな本屋に仕事関係の本を買いにいったら交通費も経費となる。無線LANを借りるためにマクドナルドで払ったコーヒー代も通信費と考えることもできる。仕事に関係しそうな経費なら少額でも積み上げていけば節税につながるはずだ。

インフレ時代の確定申告

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