意外と知らないサラリーマンの住民税、所得税とは何が違う?大増税時代(1/5 ページ)

大手企業の本社があるA市は裕福なので住民税が安いらしい――こんな都市伝説を聞いたことはないだろうか? 住民税は、基本的に全国一律だ。今回は意外と知らない住民税の仕組みを解説する。

» 2012年02月14日 16時00分 公開
[奥川浩彦Business Media 誠]

 前回「年収440万円、独身の場合は? 節税のコツが分かる税金の話」は、サラリーマンの税金(所得税)について解説した。給与所得控除や各種控除、税率について整理し、3パターンの事例で所得税の計算をしている。実はこれでも説明しきれていない部分がある。それは住民税だ(というのも、住民税の説明が原稿用紙換算約40枚の長文になってしまったため……)。今回はこの住民税から話を始めたい。

 過去にも書いているが、サラリーマン時代の筆者は「○○市は税金が高い」といった都市伝説を「ふ〜ん、そうなんだ」と思っていた。住民税が基本的に全国一律で、何処に住んでも同じだというの知ったのは独立してからだった。今「えっそうなの」と思った人はこの記事の想定する読者だ。筆者は7年前の筆者自身が理解できるように、この記事を執筆している。

 住民税の計算方法は、所得税の計算方法と基本的な部分は似ていて下記の式となる。

 (1)給与の収入金額(年収)−給与所得控除=給与所得

 (2)給与所得−各種控除=課税所得

 (3)課税所得×税率+均等割−調整控除=住民税

 (1)は所得税とまったく同じ。(2)は計算式は所得税と同じだが、控除の金額が所得税と異なっていてやや分かりにくい。(3)は税率は10%で固定だが均等割や調整控除といったおまけが付く。課税所得×税率の部分は所得割と呼ばれている。税率10%の内訳は道府県民税4%+市町村民税6%(東京23区は都民税と特別区民税)。

 順番に見て行こう。(1)の給与所得控除は所得税も住民税も同じで下記表の計算式で算出できる。

給与などの収入金額(年収) 給与所得控除額
162万5000円以下 65万円
162万5000円〜180万円以下 収入金額×40%
180万円〜360万円以下 収入金額×30%+18万円
360万円〜660万円以下 収入金額×20%+54万円
660万円〜1000万円以下 収入金額×10%+120万円
1000万円以上 収入金額×5%+170万円

 (2)の各種控除の部分は、内容的には所得税の場合と同じになる。配偶者控除の条件、扶養控除の年齢条件なども同じだ。ただし、控除される金額は所得税と住民税では一部異なっている。主な控除の金額は以下の通りだ。

控除名 住民税の控除額 所得税の控除額
基礎控除 33万円 38万円
配偶者控除 33万円 38万円
配偶者特別控除 〜33万円 〜38万円
扶養控除(一般) 33万円 38万円
扶養控除(特定) 45万円 63万円
扶養控除(同居老親) 45万円 58万円
寡婦控除 26万円 27万円
特定寡婦控除 30万円 35万円
寡夫控除 26万円 27万円
社会保険料控除 その年の支払額 その年の支払額
生命保険料控除 〜3万5000円 〜5万円
地震保険料控除 〜2万5000円 〜5万円
医療費控除 その年の支払額−10万円 その年の支払額−10万円

 前回の所得税の事例で住民税の各種控除と課税所得額を計算してみよう。

年収440万円、独身、生命保険なしの場合

 年収440万円の場合、給与所得控除は142万円。ここまでは所得税と同じだ。

給与などの収入金額(年収) 給与所得控除額
360万円〜660万円以下 収入金額×20%+54万円
  1. 440万円×20%+54万円=142万円

 次の各種控除は、社会保険は約58万5千円で同じだが、基礎控除の38万円が33万円となる。(1)(2)に当てはめて住民税の課税所得を計算すると、

 (1)給与の収入金額(年収)−給与所得控除=給与所得

   440万円−142万円=298万円

 (2)給与所得−各種控除(社会保険料控除+基礎控除)=課税所得

   298万円−(58万5千円+33万円)=206万5000円

 となる。所得税の課税所得額は201万5000円だったので基礎控除の差額5万円分だけ住民税の課税所得額は増えている。

年収520万円、専業主婦と小学生1人、生命保険料3万5000円の場合

 年収520万円の場合も、給与所得控除は所得税と同じ158万円。

給与などの収入金額(年収) 給与所得控除額
360万円〜660万円以下 収入金額×20%+54万円
  1. 520万円×20%+54万円=158万円

 各種控除は社会保険が約69万円以外は全て異なる。基礎控除は33万円。妻(配偶者)がいるので配偶者控除も33万円、子供は中学生以下なので扶養控除が廃止され控除なし、生命保険を3万5000円支払ったので以下の式から2万5000円となる。

年間の支払保険料の合計 控除額
1万5000円以下 支払金額
1万5000円〜4万円以下 支払金額÷2+7500円
4万円〜7万円以下 支払金額÷4+1万7500円
7万円以上 3万5000円
住民税の生命保険料控除

 所得税の控除額と比べると生命保険料控除も少なくなっていることが分かる。

年間の支払保険料の合計 控除額
2万5000円以下 支払金額
2万5000円〜5万円以下 支払金額÷2+1万2500円
5万円〜10万円以下 支払金額÷4+2万5000円
10万円以上 5万円
所得税の生命保険料控除

 これらの金額を(1)(2)に当てはめると、

 (1)給与の収入金額(年収)−給与所得控除=給与所得

   520万円−158万円=362万円

 (2)給与所得−各種控除(社会保険料控除+基礎控除+配偶者控除+生命保険料控除)=課税所得

   362万−(69万円+33万円+33万円+2万5000円)=224万5000円

 となり、所得税の214万円より課税所得は10万5000円増えている。

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