意外と知らないサラリーマンの住民税、所得税とは何が違う?大増税時代(5/5 ページ)

» 2012年02月14日 16時00分 公開
[奥川浩彦Business Media 誠]
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 前回も書いたが、住民税は時間差攻撃で納税する。自営業者は3月までに確定申告し、6月に1年分の納付するか6月、8月、10月、1月の4回に分けて納付する。平成23年(2011年)の住民税は平成24年(2012年)の6月以降に納税することになる。

 サラリーマンの場合は平成23年(2011年)の住民税は平成24年(2012年)の6月から平成25年(2013年)の5月まで1年間を掛けて天引きされる。現在天引きされているのは平成22年(2010年)の住民税で、平成23年(2011年)の住民税は平成24年(2012年)の6月から天引きされることになる。現在天引きされている所得税は平成24年(2012年)の所得税なので、かなりの時差が発生している。

 よって新入社員は2年目の6月から住民税の天引きが始まり、退職した人は翌年も住民税の納付が必要となる。平成23年から始まった子ども手当分による増税分は平成24年(2012年)の6月から始まり天引き額が増えることになる。

 毎月の天引きされる額は12分割され100円単位で調整されている。例えば先ほどの例の20万8000円の場合、12で割ると1万7333円となるので7月から翌年5月が1万7300円、最初の6月だけ1万7700円となる。ボーナスでの天引きは行われない。

サラリーマンの節税

 サラリーマンの節税を考える前に税金の計算式をいま一度みてみよう。

 (1)給与の収入金額(年収)−給与所得控除=給与所得

 (2)給与所得−各種控除=課税所得

 (3)課税所得×税率=所得税(住民税)

 3つの式の中で給与所得控除と税率は自動的に決まる。よって税金を減らすには年収を減らすか各種控除を増やすかの2つしかない。年収を減らせば納税額は減るが、手取りはもっと減るので答えは1つ、各種控除を増やすのがサラリーマンの節税といえる。

 根本的には節税を考えるより年収を増やす努力をするのが一番だが、それが簡単にできれば誰しも苦労しないというのも現実だろう。今は年収が少なくても、将来は高額所得者になるかもしれないから、知っておいてそんはないという考え方もある。

 まずは配偶者控除。すなわち結婚だ。税金の計算は12月31日の状態でその年の1年分の税金を算出する。専業主婦の妻を正月から年末まで養っても、12月31日の1日だけ養っても1年分として計算される。年始に入籍を予定しているなら、年末に籍だけでも入れておけば配偶者控除(所得税38万円、住民税33万円)が1年早く受けられる。もし所得税の税率20%(年収700万円くらいか)の人なら所得税の20%、住民税の10%が減るので11万円くらい納税額が減ることになる。税率10%の人なら7万円くらい、5%の人なら5万円くらいの節税となる。

 理屈はそうだが現実は微妙なところもある。例えばできちゃった結婚で結婚後は専業主婦になるとしても、結婚前に働いていてそこそこの収入(年収141万円以上)があれば籍を入れても配偶者控除も配偶者特別控除も受けられない。年末に入籍しようが年始に入籍しようが納税額は同じとなる。

 彼女(妻となる人)がアルバイト程度の仕事で年収103万円以下だったとしよう。その場合は親の扶養控除を受けている可能性が高い。もし自分より彼女の親の課税所得(年収)が多ければ、扶養控除の方が節税できることになる。実際に結婚前に先方の親と自分の年収、課税所得を比較して入籍時期を決める人がいるとは考えにくいが、年内の入籍なら自分の税金が減り、年始の入籍なら親の税金が減る。トータルでどちらが得かは年収次第だ。税理士事務所の経営者の娘と社員の結婚なら「年始の入籍の方が得だ」なんて打ち合せがあるのだろうか。

 結婚と同様、離婚も税金に影響する。配偶者控除の対象となっている妻と離婚するなら年末より年始に届けを出した方が1年多く控除を受けられる。年収が増えていることや、妻が働いていない確率が高くなるので、実際には結婚よりも離婚の方が節税につながるような気がする。

特定扶養親族の控除はどうなる?

 次は扶養控除だ。まずは親を扶養親族に入れられるかをチェックしよう。公的年金で生活を送っている場合は65歳未満だと108万円以下(公的年金控除70万円を引くと38万円)、65歳以上だと158万円以下(公的年金控除120万円を引くと38万円)なら扶養控除を受けられる。注意点は遺族年金などは公的年金ではないので、夫が亡くなった妻は多額の遺族年金をもらっていても扶養控除の対象となる。扶養控除は生計を一にしている必要がある。同居の場合は比較的問題はないが、別居の場合は仕送りなどの証明が必要とされることがある。

 世の中は就職難で大学を出ても就職できない人が増えている。子供が卒業後もフリーターや非正規雇用となり年収が103万円以下で仕送りをしている場合は扶養親族にできる可能性がある。ミュージシャンやお笑い芸人を目指して貧乏生活をしている息子に仕送りしている場合も対象となる。

 注意点は年収が103万円を越えると控除がゼロになることだ。妻の収入は103万円を越えても配偶者特別控除があるが、扶養控除は所得税38万円+住民税33万円の控除がいきなり0円になる。課税所得によるが子供のアルバイト収入が104万円になったことで11万円や7万円納税額が増えることもあるので、微妙に越えるなら103万円に収まるようにした方が得となる。

 気の長い節税の話をしよう。特定扶養親族の対象は、考え方としては大学生の子を持つ親の負担軽減のための控除だが、実際には大学生という基準はない。国税局のWebサイトには「特定扶養親族とは、控除対象扶養親族のうち、その年12月31日現在の年齢が19歳以上23歳未満の人をいいます」と書かれている。

 4月から12月生まれの人はストレートに行けば大学1年の年末に19歳、2年の年末に20歳、3年の年末に21歳、4年の年末に22歳となる。社会人1年生の年末には23歳となるため23歳未満の条件から外れ特定扶養親族の対象ではなくなる。

 早生まれとなる1月から3月生まれ(正確には4月1日生まれまで)の人は大学1年の年末は18歳で特定扶養親族の対象外。2年の年末に19歳、3年の年末に20歳、4年の年末に21歳、社会人1年生の年末に22歳となる。年齢的には社会人1年生の年末は23歳未満なので特定扶養親族の対象となるが、4月から12月までの収入が103万円を越えれば扶養親族ではなくなるので控除を受けることができない。結局3年間しか特定扶養親族の対象とならないため1年分損をすることになる。

 特定扶養親族は所得税で63万円、住民税で45万円の控除があるので、年収(税率)によるが節税効果は配偶者控除よりも大きい。今晩から頑張って年内に出産ができれば22年後に得する可能性がある。この節税の問題点は扶養控除廃止のうわさが流れる中、22年後に特定扶養親族の控除がそのまま残っているかが怪しいことだろう。

医療費10万円以上で控除対象に

 次の控除は医療費控除だ。医療費控除は10万円又は所得が200万円未満の人は所得の5%を越えた医療費が控除の対象となる。家族全員の医療費の合計が15万円なら5万円が控除される。所得が120万円の人なら6万円を越えた医療費が控除の対象となるということだ。

 医療費控除の注意点は生計を一にするという条件だ。離れて住んでいても仕送りをしていれば医療費を合算することができる。離れて住む大学生の子供が歯の治療で定期的に医療費を払ったりしていれば、領収書を捨てないように伝えておいた方がいいだろう。

 共働きで妻が配偶者控除の対象になっていなくても医療費は合算できる。例えば妻の収入は貯蓄に回し、夫の給料で生活している場合は同じ財布から医療費を出費していることになる。当然、税率の高い人から控除した方が節税になるので、その点も注意しよう。

 保険適用外のレーシック手術やインプラント治療なども医療行為として認められているので控除の対象となる。歯並びの矯正治療も美容目的は控除の対象とならないが、かみ合わせ向上が目的だと控除の対象となるらしい。高額な医療費を払う場合は税金のことも考えると得する可能性がありそうだ。

 各種控除は多くの項目があるので、人それぞれの事情で該当する可能性がある。各種控除の概要を理解しておけば、いざ結婚、いざ離婚、いざ退職、いざ治療……といった際に節税のチャンスがあるかもしれない。

 次回はいよいよ始まる確定申告について解説したい。

インフレ時代の確定申告
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