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» 2012年02月14日 16時00分 公開

意外と知らないサラリーマンの住民税、所得税とは何が違う?大増税時代(3/5 ページ)

[奥川浩彦,Business Media 誠]

 パートの主婦の年収によって所得税、住民税の非課税対象、夫の配偶者控除の対象になるかを表にすると以下の通りだ。

収入 給与所得控除後の所得 所得税 住民税 配偶者控除の対象
100万円以下 35万円以下 非課税 非課税 なる
100万円越え103万円以下 35万円越え38万円以下 非課税 課税 なる
103万円超え 38万円越え 課税 課税 ならない

 103万円を超えると、配偶者特別控除の対象となるのは所得税も住民税も同じだ。100万円越え103万円以下の場合に住民税が課税される自治体が多いので注意しよう。この表が最も一般的な条件となるが、先ほどの別府市の場合96万5000円を超えると住民税が課税になると書かれているので、全国にはもっと低い年収でも住民税が課税される自治体があるかもしれない。

 こうして細かく調べてみると自治体によって異なる点があるが、大本となる税率が地域によって1割、2割と差があるわけではなく、9割以上の地域でほぼ同じ税額になると思われる。均等割の部分で数百円程度の差はあるが、多くの人は住民税の税額は数十万円と大きいので「何処に住んでも住民税は同じ」という感覚は間違っていないだろう。

 住民税の最後は調整控除だ。話は平成19年(2007年)に実施された税制改正にさかのぼる。地方分権を進めるため、国税(所得税)から地方税(住民税)へ3兆円の税源移譲を目的に、所得税と住民税の税率の見直しが行われた。ひらたく言うと所得税を減らし、住民税を増やすということだ。その際、税制の変更で増税にならないように設定されたのが調整控除だ。税率は以下のように変わった。

住民税税率変更(2007年〜)

 調整控除額の計算は、以下のルールで行われている。

合計課税所得金額が200万円以下の場合

 次の(X)と(Y)のいずれか少ない金額の5%。

 (X)人的控除額の差の合計額

 (Y)合計課税所得金額

合計課税所得金額が200万円を超える場合

 (人的控除額の差の合計額−(課税所得額−200万円))の5%。ただしこの金額が2500円未満の場合は2500円

 実に分かりにくいルールだ。ここで出てくる人的控除とは基礎控除、配偶者控除といった人にかかわる控除で、生命保険料控除、地震保険料控除は含まれない。一応試算してみると、年収340万円、独身、生命保険なし、社会保険46万円の場合で所得税の基礎控除は38万円、住民税の基礎控除は33万円なので、所得税と住民税の課税所得は以下のようになる。

  • 収入−給与所得控除−各種控除=課税所得

 所得税の課税所得:340万円−120万円−46万円−38万円=136万円

 住民税の課税所得:340万円−120万円−46万円−33万円=141万円

 所得税136万円の税率は10%から5%に変更。住民税141万円の税率は5%から10%に引き上げられた。

 改正前の税額は、所得税が136万円×10%=13万6000円。住民税が141万円×5%=7万500円で、合計20万6500円となる。

 一方改正後の税額は。所得税が136万円×5%=6万8000円。住民税が141万円×10%=14万1000円で、合計20万9000円だ。

 所得税が減り、住民税が増え所得税と住民税の合計は2500円の増税となった。所得税と住民税の基礎控除の差額5万円が影響している。

 これを先ほどのルールに従い控除額を計算してみよう。課税所得額が200万円以下なので(X)人的控除額の差の合計額5万円と(Y)合計課税所得金額141万円のいずれか少ない金額の5%なので、

 (X)人的控除額の差の合計額 5万円×5%=2500円

 増税された2500円に対し、調整控除で2500円を引いて合計の納税額は改正後も同じになった。

 調整控除を引いても同じにならないケースもある。年収560万円、妻と大学生の子供がいて生命保険を10万円以上支払って社会保険が76万円の場合は、

 収入−給与所得控除−各種控除(社会保険+人的控除+生命保険料控除)=課税所得

  • 所得税の課税所得:560万円−166万円−(76万円+38万円+38万円+63万円+5万円)=174万円
  • 住民税の課税所得:560万円−166万円−(76万円+33万円+33万円+45万円+3万5000円)=203万5000円

 所得税174万円の税率は10%から5%に変更。住民税203万5000円の税率は200万円以下が5%、200万円を越えた3万5000円が10%から全額10%に変更されている。

 <改正前の税額>

 所得税:174万円×10%=17万4000円

 住民税:200万円×5%+3万5000千円×10%=10万3500円

 合計:27万7500円

 <改正後の税額>

 所得税:174万円×5%=8万7000円

 住民税:203万5000円×10%=20万3500円

 合計:29万500円

 となり、1万3000円も増税となった。所得税と住民税の控除の差額が基礎控除5万円、配偶者控除5万円、特定扶養親族18万円、生命保険1万5000円となり、大きく影響している。

 調整控除を計算してみよう。生命保険料控除以外の人的控除の差額の合計は28万円。課税所得額が200万円を超えるので、(人的控除額の差の合計額−(課税所得額−200万円))の5%は、28万円−(203万5000円−200万円)×5%=1万2250円となる。

 増税額の1万3000円に対して調整控除は、1万2250円で750円の増税は調整しきれなかった。調整対象外の生命保険料控除の所得税と住民税の控除額の差1万5000円の5%が残った形となる。

 筆者はこの調整控除をみると日本の税金の仕組みは増築を繰り返した田舎の温泉旅館のように感じられる。配偶者控除や扶養控除の廃止など部分的な改正がうわさになっているが、改築よりさら地にして建て直した方がいい時期に来ていると思っている。

インフレ時代の確定申告

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