最後に紹介するのはコピー機能。さきに紹介したスキャン機能とプリント機能を組み合わせ、読み取った原稿を即印刷できる。単機能のモバイルスキャナとモバイルプリンタを組み合わせてもできなくはないが、その場合は必ず間でPCを経由する必要が出てくる。PCと接続せず、本体のタッチスクリーンからの操作で本製品単体でコピーができるのは、重宝するケースも多そうだ。
タッチスクリーンからの設定では、カラーもしくはモノクロの選択のほか、濃度調整、さらにはコピーの部数などが設定できる。いったん設定した値をデフォルトの設定値として保存することも可能だ。
挙動については、さきに紹介したスキャン機能とプリント機能を同時に使う形になるので、原稿は手前から奥に向かって、印刷用紙は奥から手前に向かって送られるといった具合に、原稿と印刷用紙が平行にすれ違うような形になる。スキャンが終わってからプリントを開始するのではなく、読み取った部分からすぐにプリントされるので、余計な待ち時間もかからない。
速度については標準でモノクロが毎分4枚、カラーが同2枚と、プリンタ機能に比べるとやや遅い。これは前述のようにスキャン速度に合わせてプリントしているためであり、致し方ないだろう。実際に試したところ、A4カラー200dpiでの読み取りで1分少々かかった。さきほどのPCからの印刷が33秒かかったことを考えると、おおむね想定の範囲内。こちらも詳しくは動画でもチェックしてほしい。
やや気になったのが、縮小印刷を実行する際、A4以外ではレターやリーガルなど、国内ではあまり使われないサイズで記載されていること。一応パーセントでも表示されてはいるが、寸法もインチ表記とあって、少々分かりづらい。単純にインタフェースを訳するだけでは済まない部分で難しいところだ。とはいえ、縮小印刷のニーズがそれほど高いとは思えないので致命的な問題というわけではない。
以上、各機能をチェックしたが、持ち運び可能という制約の中でなかなかレベルの高い製品に仕上がっているという印象。毎日意識せずに持ち歩くのは少々無理があるが、必要な時に外回りのスタッフがバッグに入れて持参するといった使い方はじゅうぶんに可能だろうし、車に積んで移動するのであればまったく苦にならないだろう。個人的には、汎用カートリッジにこだわらなくてもよいので、ボディがもう1〜2センチ薄くなれば……という気はするが、このあたりは人によっても評価が変わるだろう。
秀逸なのは、こうしたモバイル製品につきものの、機能の省略による実用性の低下をほとんど感じないこと。昨今の据置タイプのインクジェット複合機が備えて、本機が備えていない機能といえば、無線LANを含めたネットワークインタフェースや両面印刷、両面スキャンなど。だが両面印刷や両面スキャンは用紙を裏返して再度印刷したりスキャンしたりすればいいと割り切ることもできる。
モバイルユースを前面に打ち出してはいるものの、それ以外にも工事現場の事務所や、地域のイベントで使用する仮設事務所、さらにはセミナーやイベント会場に一時的に持ち込んでの利用など、幅広い用途に役立ちそうだ。実売価格も3万円台後半と機能に見合った価格帯であり、なによりプリント/コピー/スキャンそれぞれの機能が必要という前提であれば、ほかに選択肢がほとんどないのが現状だ。出先でオフィスと同等の業務をこなしたい人にとって、強い味方になってくれる1台であることは間違いなさそうだ。
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