みるみる値下がりする商品はどう売ればいいか?トップ1%の人だけが実践している思考の法則(2/2 ページ)

» 2013年04月09日 11時00分 公開
[永田豊志,Business Media 誠]
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中古車を「売る」から、「買う」へ逆転の発想

 この問題を「逆転的アプローチ」によって解決したのが中古車買取専門というビジネスモデルです。中古車買取専門としては、アップル(コンピュータのアップルと別の会社です)やガリバーが知られています。彼らは、一般利用者を「販売先」ではなく、「仕入れ元」と考えました。そして、業者オークションを「仕入れ」ではなく、「販売」の場ととらえたのです。業者で仕入れて、一般客に販売、の流れとまったく逆のビジネスをやったのです。

 利用者相手の販売では前述のように時間経過によるリスクがありますが、業者オークションであれば、相場近辺の金額で確実にさばくことができます(生鮮食料品のような値下がりリスクを回避できる)。商売のポイントは、いかにオークション相場よりも安い金額で大量に一般客から仕入れるか、どうかです。だから、テレビコマーシャルで大々的に「買い取ります!」と宣伝しているわけですね。

 販売できる見通しが確実であれば、直前に同じ車種を仕入れられれば、販売価格との差額はそれほど大きくとる必要はありません。中古車屋にとっては、時間経過や販売できないかもしれないというリスクを取り除くことができ、車を手放すオーナーにとっては、時間経過リスクがない分、高く買い取ってもらうことができます。まさに、WIN WIN状態!

 実際に、このビジネスモデルは大成功し、今ではいろんな品目で「中古買取専門」というビジネスが生まれています。販売見込みが確実で、在庫を長期にかかえることも不要になったのだから、買取=利益の確保となります。これが、「買取専門」の宣伝を毎日のように私たちが目にする理由なのです。

あなたのビジネスに逆転のアプローチを加えてみよう

 物事の抜本的な解決を行うときに逆転のアプローチ、業界慣習の逆を行くというアプローチは非常に効果的です。筆者の新規事業の発想セミナーでは、かならず参加者に「自分の会社や業界で、当たり前、とされている固定観念や慣習」をあげてもらっています。その上で、まったく逆のアプローチが成立しないか、考えてもらうようにしています。

 まずは、現在の業界慣習や仕事の流れを思い起こしてください。そして、ビジネスモデルを描いて、その逆が成立しないかを考えてみてください。

 例えば、営業の手間がたいへんなら、顧客にこちらから出向くのではなく、来てもらうことはできないでしょうか?(アクションの逆転)

 多くのオンラインビジネスは、営業店や営業マンを持たずに、検索エンジンに最適化することで、顧客のほうから「問い合わせ」をもらってビジネスを行なっています。

 また、営業時間を昼夜逆転してみるというのはどうでしょうか?(時間軸の逆転)

 シンガポールのナイトサファリは、営業時間が夜7時から深夜0時までとなっています。このナイトサファリ、世界初の夜行性動物のための動物園として、1994年に設立されました。園内には約130種類、1000頭を越える夜行性の動物たちがいます。昼間の動物園では、猛獣もぼーっとしているものですが、ここでは夜行性動物ならではの生き生きとした生態が見れるとあって大人気です。

 品揃えを増やすのではなく、最小限の品目数に絞れないでしょうか?(量の逆転)

 一般的には品ぞろえは多いほうが顧客満足度は高いと信じられていますが、人間は選択肢が多すぎると何も購入しないという傾向があるといいます。そのため、一部の百貨店やディスカウントストアでは、あえて「オススメ商品ですよ」ということをアピールして、1品を大量展示して販売に結びつけているところもあります。

 IT業界では、複製コスト、提供コストが非常に安く済むために、成果に応じて成功報酬が課金されるモデルが普及しています。これも、従来の「納品時に支払い」←→無料だが成功報酬を後からもらえないか? という逆転の発想の1つです。

 問題となる対象が動かせないものであれば、別のものを動かすほかありません。中古車買取の生まれた背景には、中古車の販売価格が時間とともに低下していく事象は誰も変えることができないという前提がありました。だから、ほかの要素を組み替えてみたわけです。ビジネスアプローチを変えたのです。

 アイデアを思いついたら、それを実行し、成功させるためのキーファクターが何になるのかを考えます。先の中古車買取の例でいれば、いかにオークション相場よりも安い金額で、安定的に一般客から中古車を買い取れるかということが成功のキーファクターです。そのため、リアルタイムの相場情報と連動したスピーディな買取査定システムが必要になるはずです。当然ながら、これらをつなぐテクノロジー、システム構築も重要となってきます。

 あなたは、業界慣習や固定観念にとらわれずに、「逆」を行くことができますか? 金融相場でも、常に勝てる人は、周囲が見放したものを買い集め、相場が熱くなると売ってしまうような人です。もちろん、他人の逆を行くのには、多少の勇気が必要です。しかし、だからこそまだ未開拓の利益が眠っているのです。それを信じて、ぜひ最初の一歩を踏み出してください。

ビジネスプロデュース力のヒント

  • 自分をとりまく固定観念、業界慣習を考え、今のやり方に対して「逆」のアプローチを考えてみませんか? 逆転の発想は、最初は奇異に映るかもしれないし、周囲は嘲笑(ちょうしょう)するかもしれません。しかし、皆が反対すればするほど、実は大きな利益の期待できる未開のマーケットが残されている可能性が高いのです。

 なお本連載の基となった『トップ1%の人だけが実践している思考の法則』(永田豊志著、かんき出版刊)では、5Aサイクルの具体例として、グーグルのほか、ダイソン、アマゾンなど今をときめくイノベーティブな企業群のエピソードを18のケースストーリーで紹介しています。

集中連載『トップ1%の人だけが実践している思考の法則』について

 本連載は2012年12月19日に発売した『トップ1%の人だけが実践している思考の法則』(永田豊志著、かんき出版刊)から一部抜粋しています。

  • なぜ、Amazonは「大量の小口注文」をさばけるのか?
  • なぜ、Googleは「独自の検索システム」を編み出せたのか?
  • なぜ、ディズニーランドは「夢」を売ることができるのか?
  • なぜ、ダイソンは「羽根のない扇風機」を開発できたのか?

 本書は、イノベーションを起こして、ビジネスで勝ち残るための「思考法則」についての解説書です。これからの働き方は、大きく変わります。今まで通りに目の前にある仕事を頑張って働くのではなく、新しいイノベーションを起こしてソリュ―ション(問題解決)することが不可欠になります。本書はあなたの仕事にイノベーションを起こすために、トップ1%のできるビジネスマンだけが実践している「思考の法則」を著者、永田豊志氏が見つけ、分かりやすくまとめたものです。

 「営業」「企画」「経理」「総務」「財務」「マーケティング」――など、あなたが何を専門に従事しているかはまったく関係ありません。すべてのビジネスパーソンに必要な「思考」だからです。ぜひ、本書を読んで、変化の激しい時代に、あなたがたくましく生き残れるよう役立ててください。

著者紹介:永田豊志(ながた・とよし)

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 知的生産研究家、新規事業プロデューサー。ショーケース・ティービー取締役COO。

 リクルートで新規事業開発を担当し、グループ会社のメディアファクトリーでは漫画やアニメ関連のコンテンツビジネスを立ち上げる。2005年より企業のeマーケティング改善事業に特化した新会社、ショーケース・ティービーを共同設立。現在は、取締役最高執行責任者として新しいWebサービスの開発や経営に携わっている。

 ビジネスマンの「知的生産性の向上」をテーマに精力的に執筆・講演活動も行っている。近著に『知的生産力が劇的に高まる最強フレームワーク100』『革新的なアイデアがザクザク生まれる発想フレームワーク55』(いずれもソフトバンククリエイティブ刊)、『頭がよくなる「図解思考」の技術』『プレゼンがうまい人の「図解思考」の技術』『ノート・手帳・メモが変わる絵文字の技術』(中経出版刊)、『すべての勉強は、「図」でうまくいく』(三笠書房刊)がある。

連絡先: nagata@showcase-tv.com

Webサイト: www.showcase-tv.com

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