部下を“その気にさせる”トーク術田中淳子の人間関係に効く“サプリ”(2/2 ページ)

» 2013年06月27日 10時00分 公開
[田中淳子,Business Media 誠]
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Photo 部下に仕事を頼むときは、やる気を刺激する頼み方をすることが大事だ(写真と本文は関係ありません)

 中には、人をその気にさせるのがとても上手な人もいる。ある部署のマネージャMさんから受け取ったメールには、あるタスクに参加してくれないか、という相談ごとが書かれていた。『部署も異なる私になぜ?』と疑問に思い、「そのタスクには興味があるので、もちろん参加したいと思いますが、そもそも、別部署の私に声がかかったのは、どういうわけですか?」と返信すると、「淳子さんならいろいろ知恵を持っているのではないかなぁと思って」という回答があった。

 彼女のメールを分析的に読んでみると、他者をいい気分にさせて何か新しいことに巻き込むのが非常にうまいことが分かる。

 「○○さんに手伝ってもらえると、スムーズに進むと思うんです」「××さんのアイディアをここに生かしてもらえたらうれしいなぁと思ったので、お願いします」

 同僚も、「Mさんって、頼み方が上手ですよね。Mさんに頼まれると、嫌と言えないばかりか、“ぜひやりましょう”“せひやらせてください”という気持ちになっちゃうもの」と言っていて、多くがそう感じているようなのである。

 一人でできることは限られているので、周囲を巻きこみながら仕事を進めることは大事だ。その際、巻き込まれる側が「前向きに、真剣に、モチベーション高く臨んでくれるかどうか」は、依頼する側の言い方ひとつで変わってくるものだろう。

 以前、新入社員に、「先輩に言われて、その気になった“うれしいことば”は?」と問いかけてみたところ、とてもすてきな表現の例がたくさん集まってきた。

  • 指示された資料を完成させ、提出したら、それに対して、メールでフィードバックがあった。「想定外の出来です! いい意味で」とあって、うれしかった。
  • 「期待以上の新人が来てくれてうれしい」と先輩に言われた。
  • あるプロジェクトが終わった時、先輩から「またあなたと一緒に仕事したい」と言われ、新人なのにそんな風に言われてもっと頑張ろうと思った。
  • 先輩から指示があった報告書を作成し、メールで送信したら、夜遅くに携帯電話から返事が来て、そこに「あまりの出来に、涙で前が見えません(^o^)。ありがとうございました」とあって、そのメールを何度も見返している。
  • 「配属直後と比べれたら、ずいぶん成長したよね」と声を掛けてくれた。
  • 「最近、“社会人”らしくなったね」と言われた。

 どうだろう。やる気が刺激される言い方ばかりではないだろうか。

 プロジェクトの打ち上げなどで、リーダーがこうあいさつした、という話も印象的だ。

 「メンバーに恵まれて、とてもよい仕事ができました。どうもありがとうございました」

 実際には、メンバーの未熟さによるミスやトラブルなども多少はあったものの、最後の最後で「メンバーに恵まれて」と言ってもらえたことで、メンバーはこれからもまた一生懸命頑張ろうと思えたに違いない。

 よく観察してみると、きっと周囲に何人かは表現上手な人がいるはずだ。そういう人の物言いをまねて、自分の言葉のひきだしを充実させていくのも手かもしれない。

著者プロフィール:田中淳子

田中淳子

 グローバルナレッジネットワーク株式会社 人材教育コンサルタント/産業カウンセラー。

 1986年上智大学文学部教育学科卒。日本ディジタル イクイップメントを経て、96年より現職。IT業界をはじめさまざまな業界の新入社員から管理職層まで延べ3万人以上の人材育成に携わり27年。2003年からは特に企業のOJT制度支援に注力している。日経BP社「日経ITプロフェッショナル」「日経SYSTEMS」「日経コンピュータ」「ITpro」などで、若手育成やコミュニケーションに関するコラムを約10年間連載。


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