一生を1社、1仕事で終えるのがマイノリティになる時代一生食える「強み」のつくり方(2/3 ページ)

» 2014年05月21日 11時00分 公開
[堀場英雄,Business Media 誠]

1つの会社、仕事を長く続けたいなら、会社の「ブラックボックス」を狙え

 基本的には、1つの会社に一生勤めるというケースは今後確実に少なくなっていきます。だからといって絶対にないわけではありません。今後はかなりマイナーな働き方になると予測されますが、1つの会社にずっと勤めたいのであれば、会社の「ブラックボックス」になっている部署で働くことをおすすめします。なぜなら、この部署に所属していれば、会社としては辞められると困ってしまうので、その会社が潰れない限りはクビになるリスクは最小だからです。

 この「ブラックボックス」というのは、会社が社外に絶対出したくない技術やノウハウのことです。自動車なら昔は内燃機関(エンジン)がそうでした。最近ではハイブリッドや燃料電池にその中心が移りつつあります。家電などでは電池技術が同じように重要です。これらのブラックボックス関連の仕事に携わっていれば、もしも会社に何かあったとしても、部門だけは買収されたり他社から同じ仕事内容でオファーが来るはずです。例えば、電池であれば韓国メーカーなどが放っておかないでしょう。

 このような事情で、これらの部署で働いている人に他の会社に移られては困ってしまうので、クビのリスクは低いです。したがって同じ会社で勤め続けられる可能性が高くなるのです。また、出世に関してもこういう部署が有利です。理由は、これらの分野は成長分野であり、会社内でも注目されて目立ちやすいからです。

 ブラックボックスになっている部署を探すには、有価証券報告書を見て役員の経歴を確認するのが1つの手です。その会社でどの部門が力を持っているかも比較的分かりますので、興味がある企業への就職や転職を考えているときにはチェックすることをおすすめします。

 しかし、今の主流部署(技術)が今後は急速に衰退することもあるので、その点では今後も成長するのか、安泰かを見極める視点は重要です。いずれにしてもこれらの部署で働くことができるなら、無理にリスクを取って転職をする必要はないかもしれません。

転職後の環境に適応するための「想像力」と「キャッチアップの技術」

 転職する場合に大事なスキルは2つあります。それは「想像力」と「キャッチアップの技術」です。ここで言う想像力とは、勤める会社に何が求められているかを想像する力で、キャッチアップの技術というのは、転職すれば多かれ少なかれ新しいことを学び習得しなければなりません。

 「想像力」は、相手が求めていることが分かる力です。例えば、なぜ経営コンサル会社の面接ではフェルミ推定(※)があるのか、ピンとくるということです。

※フェルミ推定(Fermi estimate)=実際に調査するのが難しいようなとらえどころのない量を、いくつかの手掛かりを元に論理的に推論し、短時間で概算することを指す。オーダーエスティメーションともいわれる。

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 では、なぜコンサル会社の面接でフェルミ推定があるのかというと、もちろん論理的思考力を試す目的もありますが、それ以上にお客さまの前で適当なことを言って相手から信頼を失うようなことになると、コンサルティング業務を遂行する上で大きな障害になってしまう可能性があるからです。

 コンサルタントはある業界のプロではありません。一方でコンサルティングサービスを受けるお客さんは当然ですが、業界のプロです。プロの前でとんちんかんな回答をしないためには、フェルミ推定で使う能力が役に立つのです。フェルミ推定は前提条件や制約条件をうまく設定し、誰もがなるほどと思える論理を積み上げるスキルです。だからこそ、業界のプロをもある程度納得させる回答ができる可能性が高く、大事なのです。

 「キャッチアップの技術」は、基本的には学ぶ力です。しかし、他にも大事なことがあります。転職の初期には他の人と同じように仕事ができるわけではないので、他のスキルでうまく穴埋めすることも大切です。

 私はGE時代、財務分野に転向した当初は財務のことが何も分からなかったため本当に苦労しました。このような状況では、周囲に迷惑をかけてばかりになってしまうのですが、何か教えてもらうにも、相手も仕事がありますのでボランティアでは教えてもらえません。そんなとき、財務の仕事にはとても詳しいベテランの人が英語は苦手だったとします。これは大チャンスで、その方が英語で困っているときに力になれれば貸しができるので、財務のことで困ったときにいろいろと教えてもらえるようになります。

 このようにキャッチアップをうまくするには、自分の持っているスキルで周囲に貢献できることを探し、それを効果的に使うことが学ぶ力と合わせて重要です。

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