人間関係を制するものは営業を制す――リコーが説く“名刺デジタル管理”3つのメリット(2/2 ページ)

» 2014年06月10日 11時00分 公開
[柴田克己Business Media 誠]
前のページへ 1|2       

 具体的に運用を始めてみて、多くの営業担当者が感じたメリットは「名刺をデータ化するのに面倒な手間がかからない」ことだったという。

 「これまでにも社内で名刺のデジタル化に取り組んだことがあったのですが、その際にはあまりうまくいかなかったのです。最大の理由は、スキャンした名刺データの文字認識精度が今一つだったことです。取り込んだ名刺データが自動でテキスト化されるのは便利なのですが、やはり誤認識も多かったんですね。かなりの頻度で修正することになってしまい、この手間が名刺をデータ化することのハードルを上げていたと思います」(長島氏)

 Sansanは、スキャナで取り込んだ名刺データを担当のオペレーターが目視で確認し、手作業で修正した上で登録する。高い精度の名刺データが得られるため修正する必要がないのがポイントだ。これは、企業が名刺データをデジタル化し、継続的に共有管理していくにあたって、かなり重要な要素だという。

Photo スキャンしたあとに修正の手間がかからないことが分かると、営業担当者が積極的に使うようになったという

 名刺管理のデジタル化に合わせてMA事業本部では、利用者である営業担当者にアンケートを実施。このアンケートから、定量的な導入効果を測ると同時に、今後の改善点の洗い出しなどを行っている。営業担当者には施策の効果をフィードバックしており、これが利用率の向上につながっているという。

 Sansanには、名刺を登録した企業に関する最新のニュースが配信される仕組みがあり、この機能も営業担当者の間で好評だという。「訪問前の事前調べに便利だと感じている人が多いようです」(同)

Photo 名刺を登録した企業については、その企業に関するニュースが配信されるようになる。ニュースサイトにアクセスすることなく最新情報を入手でき、営業前に見ておけば話題作りにも役立つ

 登録した名刺情報を元に作成される“組織ツリー”も好評な機能の1つだ。「組織ツリーを通じて、自分以外に同じ企業に営業をかけている人が誰か、自分が直接担当しているところ以外に自社とのつながりがある部署や人があるか――といったことをかなり正確に把握できるようになりました。これまでも戦略書の作成にあたって、訪問履歴の管理などはやっていたのですが、あくまでも自己申告ベースのものでした。各担当者が名刺をスキャンするだけで、より多くのコンタクト情報が自動的に可視化される仕組みがあることで、蓄積したデータを今後の営業活動の計画・指針を作るのに活用できる可能性が高まっていると思います」(長島氏)

Photo 顧客との関係を可視化する「組織ツリー」

「チームパフォーマンスの向上」を目指した次の段階へ

 同部門では試行において、約7万5000枚の名刺情報をデジタルデータ化したという。今後は、その活用をさらに進め、個人の利便性だけでなく「チーム」でのメリットを模索する段階へと進めていく計画だ。利用部署も大幅に拡大し、ほぼ営業全部門への導入が決まった。

 「特にMAではお客様側の窓口になってくださる方が長期間変わらないケースも多くあります。例えばSansan上で共有しているデータをうまく使って、同じ社内の新しい人や新しい部署とつながるきっかけを作れないかといったことは考えています。会える人が増えれば、それが売上の拡大にも寄与するのではないか、ということです」(長島氏)

 営業担当部署だけではなく、蓄積したデータを、マーケティングや購買担当など、社内のより広い部署で共有することで、さらに会社にとってメリットがある名刺情報の活用が可能になりそうだ。

社内実践でベストプラクティスを確立していきたい

 リコージャパンでは、こうした「社内実践」で蓄積したワークスタイル変革のノウハウを、広く顧客に提供している。全国規模で展開している「ViCreA(ヴィクレア)」と呼ばれるライブオフィスは、こうしたリコージャパンの導入事例を紹介するショールームとしての役割も担っている。

Photo リコ−ジャパンが展開するライブオフィス「ViCreA(ヴィクレア)」

 中でもMA事業本部のViCreAでは、サテライトオフィスの取り組みに加え、このSansanの事例も顧客からの関心が高いテーマのひとつだという。長島氏は「社内の担当者がお客様から名刺管理のデジタル化について問い合わせを受けて、急きょ社内の勉強会に参加するといったこともありました。社内外で急速に関心が高まっていることを感じています」と話す。

 「会社での名刺管理の効率化と情報共有というのは昔からあるテーマにもかかわらず、その最適解がなかなか見つかっていないという状況があるのではないかと思います。それが今に至って、ワークスタイルの変革や会社の統廃合に伴う情報管理の最適化といった、より大きな切り口の中で、再び注目を集めているのではないでしょうか。MA事業部としては、こうした取り組みの中でベストプラクティスを作りつつ、それぞれの課題を抱えているお客様に対しても、より実践的なノウハウを提供していきたいと考えています」(長島氏)

前のページへ 1|2       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

注目のテーマ