変革の必要を感じたら、20代でも上司からの指示を待ってはいけません。目標づくりの段階から積極的にかかわり、意見を出し、ビジョンを共有することが大切です。
本連載は、金井壽宏著、書籍『「このままでいいのか」と迷う君の 明日を変える働き方』(日本実業出版社)から一部抜粋、編集しています。
「この仕事は、自分に合っているのだろうか?」
「今のような働き方が、いつまで続くんだろう……」
迷いながら働く人のために、キャリア研究の第一人者が、仕事の本質から会社との付き合い方、キャリアの捉え方まで、読者と一緒に考えていきます。
長い仕事人生にはアップダウンがつきもの。ワクワクしながら前向きに取り組める時期もあれば、失敗や思わぬ異動に落ち込む時期もあるのが当然です。
本書では、一般の企業で働く若手14名へのインタビューをもとに、仕事の「モティベーション」、そして「キャリア」の悩みから抜け出し、成長していくための考え方を紹介します。
・いったい自分は、何のために「働く」のか?
・「組織」とどこで折り合いをつけるか?
・これからの「キャリア」をどうデザインするか?
・もっと仕事に夢中になるためには?
など、キャリアの入口、あるいは途中で立ち尽くしている人が、自分なりの「働き方」をつかむための1冊です。
これからの時代は、20代の人たちがリーダーとなり、自分が属する会社や組織を変革していくことが、さまざまな場所で求められることになると思います。若すぎるからリーダーシップがとれないのではなく、若いからこそ取り組むことのできる変革のリーダーシップというものがあるはずです。ぜひ、それを探すことに乗り出してほしいと思います。私はそう思って、いつも20歳前後の学生に接しています。
ここでは、若い人たちがリーダーシップをとり、組織を変革していくときに知っておくときっと役立つ考え方を紹介します。
組織を変えるやり方で、ここ10年ほどの間に注目が集まっている技法に、ハリソン・オーエンという、もともとは宗教家であった組織開発の達人が発案したOST(Open Space Technology)と呼ばれるものがあります。これは、組織の中の一部の人たちだけが集まって密室の中でビジョンを描くのではなく、その組織を構成する多くの人たちが輪になり一堂に会し話し合って将来を構想する、という組織運営の方法です。
かつて、ギリシャで行われていた直接民主主義のような方法といえますが、実際にそういうやり方で運営している社会は、今も世界に存在します。
アフリカのある村では、村人の全員がドラムの音を鳴らしながら集まり、幾重もの輪になって、大勢で物事をオープンに議論して決めるそうです。ハリソン・オーエンは、そういう場に何度も立ち会ったそうです。彼は、「OSTを使えば、何百人もの規模で一堂に会して、将来構想の場を創り出せるはずだ」といいます。この方法のよいところは、意見がオープンであり、誰でも平等に議論に参加できることです。
これまで多くの日本の会社では、自社の将来を構想するときや危機的な状況からの打開策を練るとき、社長と役員、営業の責任者たちだけが数人〜十数人ほどで密室に集まるのがふつうでした。限られたメンバーが話し合い、現状での問題をあぶり出し、その解決策を必死で考え出すのが一般的で、そこには若手社員の意向や考えが反映されることはまずありませんでした。
若手の人たちにとっても「会社の重大な方針は、トップと役員の一部の人が決めるのであって、自分たちはそれに従うしかない」というのが一般的な風潮だったと思います。
しかしそのような方法をとっていることには大きな弊害もありました。それは方針の決定後に、
「そんなことは聞いていなかった」
「自分たちの声が反映されていない」
「上は現場のことが分かっていない」
などと、計画立案の過程から除かれたと感じる大勢の人たちが、意識せずとも変革に対する「抵抗勢力」になってしまうことです。
上層部がよかれと思ってやった改革が、失敗に終わる原因の多くがこれにあります。
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