組織の中で、誰も危機感を感知することがなければ何も起こりません。変革の第一歩は、リーダーが危機感を他の誰よりもディープに感じることから始まるのです。
本連載は、金井壽宏著、書籍『「このままでいいのか」と迷う君の 明日を変える働き方』(日本実業出版社)から一部抜粋、編集しています。
「この仕事は、自分に合っているのだろうか?」
「今のような働き方が、いつまで続くんだろう……」
迷いながら働く人のために、キャリア研究の第一人者が、仕事の本質から会社との付き合い方、キャリアの捉え方まで、読者と一緒に考えていきます。
長い仕事人生にはアップダウンがつきもの。ワクワクしながら前向きに取り組める時期もあれば、失敗や思わぬ異動に落ち込む時期もあるのが当然です。
本書では、一般の企業で働く若手14名へのインタビューをもとに、仕事の「モティベーション」、そして「キャリア」の悩みから抜け出し、成長していくための考え方を紹介します。
・いったい自分は、何のために「働く」のか?
・「組織」とどこで折り合いをつけるか?
・これからの「キャリア」をどうデザインするか?
・もっと仕事に夢中になるためには?
など、キャリアの入口、あるいは途中で立ち尽くしている人が、自分なりの「働き方」をつかむための1冊です。
経営学では、1950年代から、組織開発(OD:Organization Development)という分野で、どうすれば組織を変えることができるのか、実践的な研究の蓄積を続けてきました。
職場や組織を変える、さらには、世界を変えるというような大きなレベルの変化をどうすれば促すことができるのか、考え続けてきたわけです。組織変革論イコール組織開発論ではありませんが、例えばジョン・P・コッターの組織変革モデルでは、次のような変革のステップが想定されています。
組織の中で、今のままではだめだという危機感を抱く人が出てくること。危機感を誰も感知することがなかったら、何も起こりません。変革の第一歩は中核的メンバー、とりわけリーダーが危機感を他の誰よりもディープに感じることです。
第二段階では、危機感を抱くようになった人同士が、つながることです。1人ひとりがバラバラのままでは、変革の勢いをつけることができません。危機に気付いているのがリーダーだけでは、独り相撲に終わってしまいます。
その次には、つながりを持った変革のコアとなる人たちが、「この組織をどう変えたいか」というビジョンを練り上げることです。危機感を持って集まっても、「だめだ、このままでは終わる」と嘆き合っていては、変革ははじまりません。
ビジョンが明確になったら、そのビジョンを組織内の人たちにコミュニケーションによって伝えることが必要になります。仮に1000人の企業なら、10人のコアメンバーが危機感を持って集まったとしても、残りの990人の社員は何も知りません。きちんとビジョンの中身を伝えていかない限り、変革は絵に描いた餅に終わってしまいます。
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