チームで元気に働くカギ、それはやっぱりストレスを減らすことビジネスチームハック・最終回

胃が痛くなるほどのストレスも嫌ですが、自覚できずにジワジワと溜まっていくストレスはもっと嫌なもの。いつの間にか積み重なっている「日常いらだちごと」ほど怖いものはありません。

» 2015年02月27日 10時00分 公開
[佐々木正悟,Business Media 誠]

 筆者は曲がりなりにも心理学をかじってきた人間ですので、やはり「ストレスを溜め込むことが恐ろしい」と常々警戒しています。ストレスといっても、あからさまに胃が痛くなるようなものから、気付かないうちに長期にわたって蓄積してしまうものまでさまざまです。そして、そのどちらであっても恐ろしい。

 もっとも、前者は意識できるだけに対策は取りやすいはず。チョコレートを食べたり、お酒を飲んだり、運動をしたり。実は「早めに寝てしまう!」というのもいいストレス対処法です。効果的で副作用がないのは運動と歓談ですが、この胃の痛みを何とかしよう、この気分の悪さをどうにかしようと前向きに取り組めば、何もしないよりはマシです。

 問題は、気付かないうちにストレスを溜め、しかも何も対応せずに放置し、むしろいつも以上に仕事をがんばり過ぎているようなケース。こちらは生活習慣病に似て、いろいろな「症状」を急に引き起こすので厄介なのです。いきなり仕事をする気がゼロになるとか、急に食欲が全然なくなるとか、突然まったく眠れなくなるとか、そういうことです。

いつの間にか積み重なっている「日常いらだちごと」

 ラザルスという心理学者は、どちらかというと「身内が亡くなった」といった重大な出来事よりも、日常のどこにでもある、ちょっとイライラすることが慢性的なストレスになり、その影響は重大だと指摘します。

 いうまでもなく「身内の死」などの重大なライフイベントは心労になります。ただし、そういう心労に気付かないという人はほとんどいません。したがって心理的に傷ついても、それへの対応を考えるものです。

 ラザルスのいう「日常いらだちごと」の負の面は、それを完全に放置する点にあります。特に忙しい人や、ちょっとした精神的な問題などを「問題としない」という主義の人が日常いらだちごとを放置しがちです。

 確かに、そんなことにかまっていられないという人の言い分にも一理あります。会社勤めでストレスのない毎日を送るなど夢のような話です。勤務中でなくても通勤電車に往復で毎日1時間も乗っていれば、少なくとも何らかの嫌な思いにをすることは避けがたいでしょう。

 筆者が派遣社員として働いていたころ、急に太りだしたことがありました。まったく気にしていませんでしたが、家族や会社の上司に指摘され体重計に乗ってみると普段よりも10キロ以上も太っていたのです。15%程度だった体脂肪率も、そのときは30%という数字になりました。

 明らかに食べ過ぎですし、そもそも食べ物の好みが変わってしまっていました。医者にかかってみると「ストレスが原因だ」と言われました。軽度の「摂食障害」(過食)だったわけです。

体重が10キロ以上も増えたのに本人はまったく気付いていない

 でも、なぜそうなったのかにまったく思い当たるふしがないのです。会社の仕事は気持ちよくこなしているつもりでしたし、別にこれといった「ライフイベント」もありません。

 医者に「過食だ」といわれたので、食事を控えようとしました。そこで気付いたのです。減らそうとしても食事量は増える一方だということに。筆者は甘いものが苦手だったのに、ヒマさえあれば落雁や最中といったお菓子に手が伸びてしまいます。そもそも、こういう状態になっていることについて何も感じていなかった自分が不思議でなりません。

 そこで真剣に考えてみて、原因らしきものを2つほど突きとめました。1つは、会社のプリンターがあり得ない頻度で紙詰まりを起こし、しかもその対応係がいつのまにか自分に定められていたことがストレスだと気付いたのです。

 もう1つは、仕事の内容でした。当時、ワープロ専用機のフロッピーディスクの中の文章をプリントアウトし、それをWordファイルにそっくり同じになるように入力し直すという仕事を担当していましたが、その作業がストレスになっていたのです。

 プリンターの紙詰まりは即座にどうにかなるようなものではありませんでしたが、ワープロの仕事はファイル変換ソフトを購入してもらうことで対応しました。そのほかのさまざまな小さなストレスも溜め込まないように、ひどくなってきたらこまめに散歩するようにしました。

 たったこれだけのことで、体重はあっさりと元の水準に戻り、和菓子も食べなくなりました。筆者の場合は、軽度の心身症で済みましたが、ストレスというものは思わぬ力を持っています。特に「日常にあふれていて、意識しないと気付きもしない」レベルのストレスは怖いのです。ときどき振り返ってみるのはとても大事なことなのです。

筆者:佐々木正悟

 心理学ジャーナリスト。専門は認知心理学。1973年北海道生まれ。1997年獨協大学卒業後、ドコモサービスに派遣社員として入社。2001年アヴィラ大学心理学科に留学。同大学卒業後、2004年ネバダ州立大学リノ校・実験心理科博士課程に移籍。2005年に帰国。

著書に『なぜ、仕事が予定どおりに終わらないのか?』『先送りせずにすぐやる人に変わる方法』『クラウド時代のタスク管理の技術』などがある。

ブログ「ライフハック心理学」主宰。

TwitterID:@nokiba

Facebook:佐々木正悟


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