新たなスタートライン――リーダーの資質として欠かせない3つのこと:研修に行ってこい!
年初のテーマは、“新しいスタートラインを設定しよう”です。それは、会社から与えられた職位(ポスト)にかかわらず、リーダーやマネジャーの資質として必要なことを磨くということです。
2010年、昨年とは少しだけ違う空気が流れはじめている――。そんな気がしませんか? この空気をつかんで上昇気流に乗るのも、現状にとどまるのも自分次第なのです。
自らの力で良い状況を生み出したいと考えている人に役立つよう、今年も連載していきます。どうぞよろしくお願いします。
それでは、年初のテーマは、ずばり“新しいスタートラインを設定しよう”です。企業経営の側面から人材育成を見ると、今最も不足している人材は、リーダーでありマネジャーです。
バブル期以降、どんどん縮小する裁量や権限、高くなる目標と重くなる責任、難しくなるメンバーの育成や動機付け、増えるルール、あふれる選択肢、事業の統廃合などの予期せぬ事態などなど……。リーダーやマネジメントをする側にとって、難しいハードルばかりが積み上げられています。さらに、給与カットなどの影響を大きく受けるのもこのような職位の人たち。こんな大変な役割、給料が多少あがっても、やりたい人が少なくなるのも無理がありません。また、リーダーやマネジメントの仕事を“会社の役割”として受け身にとらえると、精神的にも、肉体的にも疲弊してしまうでしょう。
スタートラインを設定するとは?
そこで、「こんな大変な仕事誰もやりたがらない。だからこそ、“自主的に”やってみよう」という発想で取り組んでいくことを提案したいと思います。これを「新しいスタートラインの設定」と考えています。
新しいスタートラインの設定とは、会社から与えられた職位(ポスト)にかかわらず、リーダーやマネジャーの資質として必要なことを磨くということです。必要なことは次の3つです。
- 仕事の目的や意義をつかみ、明確に伝えられるようになること
- そのために何をすべきか必要かを見極め、計画を立てることができること
- 自分と周囲の人が成果を出しやすいように場をつくり、成果に向けてチームをリードできること
これらを後輩、新入社員、中途採用社員の育成を通じて体得していこうという発想です。
しかし、いきなり役割を与えられてもいないのに、取り組むことは難しいかもしれません。そこで、次のような考え方で取り組んでみるのはいかがでしょうか? 上司の仕事の一部を、自分から進んで引き受けてみる、あるいは、上司の仕事の補佐をしながら、自分で学ぶ機会を得ていくのです。
仕事の上方化? それとも下方化?
少し異なる見方で考えてみましょう。研修などでさまざまな企業の働く人に会うと、「自分の今いる立場の範囲で仕事をする人」「今いる立場より少し上の仕事をする人」「今いる立場よりも少しレベルが低い仕事をする人」と、おおむね3層に分かれて仕事に取り組んでいる傾向が見えてきます。
少し上の仕事をする人と、少しレベルが低い仕事をする人に着目してみます。わたしはこの2つの層を「仕事の上方化・下方化現象」と呼び、少し上の仕事をする人を“上方化”、レベルの低い仕事をしている人を“下方化”と位置付けています。図にまとめましたので、参照ください。
この2層に注目するのには訳があります。仕事を上方化させている人は、総じて意欲が高く、周囲によい影響を及ぼし、その結果認められる流れを自ら作りだしています。
一方下方化させている人は、その仕事をやるべき人のやる気をそぐばかりか、成長機会も阻害しています。下方化させている人が認められないだけでなく、組織全体にもよい影響を与えず、結果的に悪循環に陥ることが多いのです。このような視点から見ても、少し上の仕事をすることが組織にとっては非常に重要です。
少し上の仕事をするメリット
また少し上の仕事をするメリットは3つあります。まず、責任は上司にあるので、相談しながら試行錯誤できること。次に、あるタイミングで自分が任される立場になる前に、すでに経験を積んでいること。最後に、自分で主体的に仕事に取り組むことになるので、知識や経験が増えることに加え、その過程が楽しめることです。
いかがでしょうか? 「少し上の仕事をする」スタートラインが設定できそうでしょうか? 今、できなくても大丈夫です。次号以降で、後輩、新入社員、中途採用社員を育成するための具体的なOJTの指導方法を紹介していく予定です。その方法を知る中で、できそうな所から取り組んでいただければと思っています。
それでは、今年もどうぞよろしくお願いします。この1年がみなさんにとって有意義な1年となりますように。
著者紹介:原田由美子(はらだ・ゆみこ)
大手生命保険会社、人材育成コンサルティング会社の仕事を通じ、組織におけるリーダー育成力(中堅層 30代〜40代)が低下しているという問題意識から、2006年Six Stars Consultingを設立、代表取締役に就任。現在と将来のリーダーを育成するための、企業内研修の体系構築、プログラム開発から運営までを提供する。
社名であるSix Starsは、仕事をする上での信条として、サービスの最高品質5つ星を越える=お客様の期待を越える仕事をし続けようとの想いから名付けた。リーダーを育成することで、組織力が強化され、好循環が生まれるような仕組みを含めた提案が評価されている。
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