「実行計画」を見える化する:「現場の情報」を見える化する
超超超ワンマン社長が圧倒的なパワーで牽引するやり方を、ボトムアップに切り替えた武蔵野。会社の方針は社長が明確にするけれど、各事業部の個別方針は、「現場」が策定するのが特徴です。
長引く不況の中、自社の経営に悩みを抱えている中小企業の経営者が多いのではないでしょうか。そんな中、経営の内部を社員に公開し、徹底的な透明化(=見える化)を継続することで、社員のモチベーションを高め、増収増益を達成した会社があります。それが経営サポート事業などを行なう武蔵野――。
とはいえ仕事の見える化は言うほど簡単ではありません。誠 Biz.IDの読者にも悩んでいる人が多いはず。そんな読者に「中小企業のカリスマ」と呼ばれる同社の小山昇社長が「現場の見える化」の方法を伝授します。
この連載は書籍『経営の見える化』から抜粋、編集したものです
社長の仕事は「チェックする」だけ
普通の会社は、「職責上位」と「声の大きい人」の意見が通りやすい。ですが、武蔵野は違います。小山昇という超超超ワンマン社長が、圧倒的なパワーで武蔵野を牽引したのは、1999年まで。2000年からやり方を変え、トップダウンからボトムアップに切り替えました。
会社の方針は社長が明確にするけれど、各事業部の個別方針は、「現場」が策定する。半年に1度、全社員とアルバイトやパートの一部が、チームごとに「社内アセスメント」を行い、自分たちの手で実行計画を作成します。休日の日曜日に、手弁当を持ち寄ってまで参加するのは、「自分たちの意見が、会社の政策になるから」です。
課題や問題点を、各自が自由にポスト・イットに書き出したら、ポスト・イットを張り出し、実行計画に落とし込みます。社長はほとんど口を挟まず、出そろった実行計画に対して、「本当に実施できるか」「本当に成果が出るか」をチェック(承認)するだけ。
1回でOKを出すこともあれば、何度も何度も差し戻すこともあります。再考させるときには、「なぜだめなのか」を社長が具体的に教えることはありません。社長が答えを言ってしまうと、社員がへそを曲げることがあります。
実行計画をつくったからといって、「計画通りに実行しているか」までは分かりません。そこで、毎月「計画の進捗状況」を評価しています。
武蔵野の社員は、「辻褄合わせ」と「やったふり」が得意なので、「実行している場面」を写真に撮らせ、掲示させています。そして環境整備点検日に、わたしが「写真を貼っているか」をチェックするのです。
医療法人社団元気会横浜病院の北島明佳理事長も武蔵野の実行計画書作成を取り入れています。部署ごとに6〜7人ずつのチーム(全12部署)を作り、半年に一度「環境整備」に関する実行計画書を発表しています。
北島理事長は、各部署の意見を「実行できるか、できないか」「成果が出るか、出ないか」に着目し、「アリ一匹逃さないつもりで厳しくチェックしている」そうです。実行計画書を作成したら、月に一度の「振り返り」も忘れない。各部署から2名ずつ集まって、「実行できたか」「成果が出たか」を発表・評価しています。
北島理事長は、「ボトムアップにより、院内のコミュニケーションがスムーズになり、組織がフラットになった」と成果を口にします。
チェックリストと点検日は、事前に公表しておく
「環境整備点検日」では、毎月1回、社長と担当部長が120点満点で採点しています。が、各部署には、事前に「チェックリスト」を渡しておくのが「正しいチェックのしかた」です。
なぜなら、チェックリストに基づいて評価すれば、月ごとの変化やプロセスを見える化しやすいからです。
また、チェックする日は公表しており、「抜き打ちチェック」はしません。
抜き打ちチェックは会社を暗くするだけですし、年12回「計画通りに実施」したほうが、仕事も清掃も精度が上がるからです。一度決めたチェック項目を、コロコロ変えてはいけません。評価するものさしが変わると、変化を見分けにくくなります。
経営計画は1冊の手帳にまとめなさい
300社以上の会社が導入し実績をあげている武蔵野の独特な経営計画書のつくり方がこの1冊『経営計画は1冊の手帳にまとめなさい』で分かる! 著者が行っているコンサルティング内容を、より具体的・実務的に落とし込んでまとめました。
著者紹介 小山昇(こやま・のぼる)
株式会社武蔵野の代表取締役社長。その経営手法には定評があり、2000年に日本IBMと並んで、日本経営品質賞を受賞した。「中小企業のカリスマ社長」と呼ばれ、現在は全国300社以上の中小企業に経営のサポートを行っている。
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