自社サイト、これから何を改善すればよいのだろう:リスティング広告次の一手
Google AdWordsのようなキーワード連動型のリスティング広告。今や大企業だけでなく、中小企業や個人事業主ですら実施する広告手法となった。確かに一定の効果はあるようだが、次の一手は何だろうか――最新マーケティング手法を考える新連載が始まります。
今やインターネットの利用率は13〜49歳では90%を超え、企業のWebサイト開設率は中小含めても85%を超えるほど。こうした中で、企業のサイトではより自社製品の購買に結びつくサイト運営が求められている。新任担当者にとって、SEOやSEMといった手法は知っていても実際に試してみたりした経験は少ないのではないか。連載を通じて、リスティング広告の実践法、さらにその次の一手を考えていきたい。
ケース1:これから何を改善すればよいのだろう
私はPC用パッケージソフトの販売会社で、Webサイト管理(主に自社のECサイト)を担当している。着任しておよそ1年半経つが、オンラインマーケティング企画業務の重要性が増し、ここのところ役割を兼務するようになった。
まず、過去を洗ってここ5年通して販売状況を見ると、明らかに店頭より、自社Webページからの販売件数が伸びていることが分かった。前任の担当者から引き継いだEコマースの良好な設計と、リスティング広告が寄与しているのではないかと考えている。しかし、伸びているとはいえ、一般的なネット市場の伸び率と比較して、明らかにうちの伸び率は低い。一般的には前年比10%や、中には40%を超える商材もあるようだ。それに比べ、うちは全体として数%程度の伸びだ。何かもっと伸ばせる施策があるのではないだろうか……。そう思い始めてから、いろいろと研究してみることにした。
現在売れ筋の商品は4点。それぞれの商品の説明ページには十分な情報も用意している。特段不備は見当たらない。そして新規顧客を誘導する方法としてはやはり、Web広告が有効と考えられるが、現在は予算の都合上リスティング広告のみ実施している。少ない予算で始められ、クリックされたら課金という、分かりやすく無駄を感じさせない広告モデルだからだ。売れ筋の商品名や関連するキーワードをたくさん盛り込むことで、クリックによる誘導も毎月数万単位で得られている。
では、これから何を改善すればよいのだろう。特にリスティング広告については、商品やサービスを検索するユーザー、つまり既にニーズが顕在化したユーザーにヒットさせるものなので、購売により近い接点での広告施策と聞いているが……。
自社サイトを開設したはいいが……
今やインターネットの利用率は13〜49歳では90%を超え、企業のWebサイト開設率は中小含めても85%を超えるほどだ。先ほどのケースと同じ立場の人は、世の中に大勢いるのではないだろうか。
自社WebサイトにEC機能を持たせれば、企業は自分達で流通網を開発する必要もなく、顧客にダイレクトに販売するチャネルを構築できる。当然そこからの中間手数料を引かれることはなく、Webサイトの維持費と純粋な仕入れなどのランニングコストを除けば、ほぼすべて利益になり得るという魅力的な販売手法となっている。
しかし、Webサイトを開設したはいいが、そこへどう顧客を呼び込むのか。こうした方法は、多くの経験を蓄積した広告代理店や、コンサルティング会社に相談しないと、なかなか得られない。しかも、そうしたノウハウを積んだ広告代理店は限られており、都心部に集中していたりする。地方の会社は十分なサービスを受けられないことも多々あるであろう。逆に都心部では、あまりにも数多くの広告代理店が存在し、それぞれのやり方の違いが分からないため、選ぶことすら大変という悩みが存在することも確かだ。
一般消費者向けの商品を取り扱う場合、もちろん楽天やYahoo!ショッピングに店を構えるのも1つの顧客獲得施策だ。問題は、それにマッチしない場合。例えば、価格競争に巻き込まれたくない商品や、BtoBでターゲットが明確な商品などは、自力で顧客を誘引してセールストークを展開しなければならない。
SEOやSEMは知っていても……
そのベーシックな対応策がSEO(Search Engine Optimization)やSEM(Search Engine Marketing)であることは、多くの担当者がご存じであろう。
SEOの場合は、多くの広告代理店などから自分たちに合った会社を選び、長期間のパートナーシップを結んで、コンサルテーションを受けることになる。長期的・継続的に施策を打ち、期間や成果に応じてパートナー企業に報酬を支払うモデルだ。実施開始から結果が出るまで数カ月かかることも珍しくないので、短期で顧客を集めたい場合には向いていないと言える。
一方SEMは、いわゆるGoogle AdWordsやYahoo!JAPANのOvertureなどのリスティング広告だ。こちらもパートナー企業を選び、長期的に戦略を練りながら最適化を目指すという、運用がメインの施策となる。担当者の多くは、直近のキャンペーンに合わせて、そのキャンペーンホームページへ大量に見込み顧客を誘導しなければならないという責務を負っているため、最低限これを実施するケースが多いのではないだろうか。
いずれも大切なのは、パートナー選びであることは言うまでもない。だが、容易にパートナー企業を見つけられない現在。まず自社でできる改善施策は、どのようなことが考えられ、どのような方法があるのだろう。次回は具体的な実践手法について考えていきたい。
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著者紹介:石橋啓次(いしばし・けいじ)
電通レイザーフィッシュのシニアメディアプランナー。1973年静岡県出身。日本大学経済学部卒。広告会社の営業として、マスメディア、OOH(Out of Home)メディア、セールスプロモーション、イベントなどでのコミュニケーションプランニングおよびクリエイティブディレクションを7年間経験した後、デジタル・アドバタイジング・コンソーシアムに入社。入社と同時にアサツーディ・ケイ(現ADKインタラクティブ)に出向。多数の大手クライアントのインターネットメディアプランニングを約4年間経験し、2007年12月より現職。
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