シズル感が重要――ヒマナイヌの川井氏「ライブ配信10の掟」:ライブ配信マーケティング2010
USTREAMやニコニコ生放送などのライブ配信サービスが注目を集めているが「何を配信したらいいか分からない」「どんなやり方をしたらいいか分からない」などの悩みも多い。「自社の業務で一番“シズル”を感じるところをライブ配信したらいい」と言うのはライブ配信を多数手がけているヒマナイヌの川井さんだ。
「自社の業務で一番“シズル”を感じるところをライブ配信したらいい」――。7月28日に開催した本誌主催イベント「ライブ配信マーケティング、成功への道 2010」にて、ライブ配信を多数手がけているヒマナイヌの川井拓也代表(デジタルハリウッド大学院教授)のコメントだ。
タレントよりクリエイターより“会社の現場”を
USTREAMやニコニコ生放送などのライブ配信サービスが注目を集めている。こうしたサービスをマーケティング活動に使いたいという企業も多いはずだ。ところが「何を配信したらいいか分からない」「どんなやり方をしたらいいか分からない」などの悩みも多いのである。
川井さんによると、ライブ配信の特徴は「共時性」「意外性」「属人性」の3つだ。「共時性とは今この体験を知らない人とともに体験していること。シンクロニシティともいう。音楽もCDのようなパッケージビジネスが落ち込む一方、ライブハウスでの生演奏やフェスのようなものが人気が出ている」。
USTREAMやニコニコ生放送でのライブ配信は、テレビのようなしっかりした構成ではないため、ややもすると盛り上がらないこともあるが、予想外の展開に意外性を感じることもある。また、テレビ番組の出演者は芸能人や有名人など限られた人たちだけだが、手軽なライブ配信サービスを使うことで、企業の担当者も出演できる。「街で出会った人から(USTREAMの)番組を見てますよ、と言われることもある」という。手軽に出られるからこそ、その人ならではの属人性も大事なのだ。
こうした特徴を生かすためには、これまでのテレビ番組のような作り方ではなく、ライブ配信に適した番組を作成すべきだ。例えば川井さんがポイントとして考えているのが「プロセスキャスティング」という考え方。USTREAMでもカシオペアの向谷実さんが作曲風景を、漫画家の石川雅之さんが作画風景をライブ配信した。作品の作成過程(プロセス)を配信(キャスト)しろ――というわけだ。
「例えば日本そば屋では、そば打ちが人の目を引くサイネージの役割を果たしていた。その仕事で一番“シズル”を感じるところをライブ配信するべきだ」。動画を作る、番組を作ると思うとタレントを雇ったりクリエイターに依頼したりする予算がない、などと考えるより、自社の業務で「一番“シズル”を感じるところをライブ配信すべき」だという。
これで失敗なし!? ライブ配信10の掟
川井さんが考えるシズル感が出そうなライブ配信に向いたコンテンツは次の4つ。まずは商品発表会。通常は記者に向けて公開するものだが、一般の人にもライブ配信することでTwitterなどのソーシャルサービス上で盛り上がる。作るところを見せるというプロセスキャスティングの意味では工場見学もいい。「一種の社会科見学。工場内でしか使われない業界用語も注目を受けるはず」。
音楽のライブなどとも通じるがお祭りのようなグルーブ感を生むイベントも向いているという。また、数人で特定のテーマについて話し合うトークライブもいい。「できれば当事者同士。司会者がいないほうが面白いはず」
ポイントも分かり、コンテンツの方向性もだいたい見えてきた――。そんな時に思い出してほしいのが川井さんが提唱する「ライブ配信10の掟」。以下に記そう(コメントはいずれも川井さんによるもの)。
- 対話可能性を担保せよ:「企業のパーソナリティをどう出すか。『生協の白石さん』が参考になる」
- 担当者が楽しむコンテンツを
- 音が最重要、絵は二の次:「生放送をだらだら見ている人は、音の変化で場面が変わったことに気づく」
- 内容と同じくらい集客に注力すべし:「いいものを作っても誰にも見られなかったらしようがない」
- 番組と考えるな、サイネージと考えろ
- 番組と考えるな、店舗と考えよ:「空気感が重要」
- 番組と考えるな、祭りだ
- 目的はハッシュタグの伝播(Twitter連携の場合)
- 単発よりシリーズ。継続は認知なり
- 当事者が出演すべし。タレントに任せるな「素顔の部分が見られるといい。 DJ TAROさんの『気軽に始めるUSTREAM「自分」発信術』を参考に」
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