元マイクロソフト社長の成毛眞氏――「もう10年来MS製品は使っていない」:企業家に聞く:成毛眞氏【後編】(3/3 ページ)
ネット時代にこそ教養がものをいう――PC黄金時代を知る元日本マイクロソフト社長の成毛眞氏が現在のIT産業をどう見ているか、またネット時代を生きる私たちはどう教養を身に付け、それをどう生かせば良いのか、そのヒントを聞いた。
名著やTEDで感動しても成功者にはなれない
まつもと 今回は、英語教育から教養、そしてITと幅広くお話を伺ってきました。最後にBusiness Media 誠や誠 Biz.IDを読んでいる読者にメッセージをお願いします。
成毛 月並みに言うと「本読め」なんですけど。ずっと言い続けているのでだんだん飽きてきたというか(笑)。しかも、今の若い世代、働き盛りの優秀な世代、特にこの媒体を読んでいるような人たちって、こっちがビックリするくらい勉強熱心だし、オフも充実させようと頑張っているし、逆にわれわれ世代から見ると「大変だね、体壊さないでね」と思うくらいで。
僕ら、あるいは有史以来の人類の30代、40代と比べても目いっぱいやっていると思うんだよね。健康と知識の獲得に打ち込んでいる、という意味で。だからといって「休め」というのも変だし……。あくまでアッパーミドルの層に限った話ではありますが。
僕らの世代は、子どもの面倒は見ないわ、六本木のオカマバーで朝まで飲んだくれるは、という具合でしたからね(笑)。
まつもと 確かに(笑)。皇居の周りをビジネスパーソンがこぞってジョギングする時代と比べると全然違いますよね。
成毛 ただ、どちらが健康かといわれると分からないけどね。ジョギングも根を詰めすぎるとかえって体に悪いと言うし。
まつもと なるほど。ただ同じ「意識の高さ」や「問題意識」があっても、今回話にあった基礎的な教養の有無で何をどのように判断し、どう行動するか、結果はかなり異なってくる――例えば国力の問題を英語力の問題に帰着しない具合に――という点はとてもふに落ちました。
成毛 そうだね。「自分が何を知らないか」を「広範囲に知っておく」ことはとても大事だね。そのために本を読むのは大事な事なんだけど、膨大な時間も掛かりますので英語と同じく万人に勧められるものではないかな。でも、この記事を読んでいる人たちにはぜひに、と思うし、書評コミュニティーサイト「HONZ」もその手助けをしていきたいと思いますね。
最後に強調しておきたいのは、そうやって高い意識を持って本を読んだり、TEDを見たりして勉強することがゴールではなく、誰も思い付かないようなことを考えついて、それに執着し実現したものが勝つということだね。好奇心こそが成功者の最大の要因だなと、煎じて詰めるとそう思います。本に書かれていたり、TEDでプレゼンされたものを見て感心している間は、彼らのフォロワーで終わるわけですから。
ビル・ゲイツとかスティーブ・ジョブズとか見ていても、子どものように好奇心が強くてワガママでワンパクだったからね。そういう意味では「遊べ、バカをやれ」ってことかもしれないね。
まつもと ジョギングやめて朝まで飲めってことかも知れませんね(笑)
多岐に渡るトピックについて聞いたが、いかがだっただろうか? そろそろ夏期休暇の過ごし方を考え始めている読者も多いはずだが、あらためて読書という基本に立ち返ってみる、というのも良いかもしれない。インタビューには書けなかったが、成毛氏は投資会社インスパイアやHONZを通じて、イノベーティブなサービスを準備していることも明かしてくれた。今後の氏の活躍にも期待したいところだ。
関連記事
- ジョブズはすごかった、で終わらせないための組織論
2011年のIT分野では、一時代を築いた人物が次々とこの世を去った。その中でも特に大勢に影響があったのが、言うまでもなくスティーブ・ジョブズ氏だ。その「すごさ」に学ぶ組織論とは。 - リストラでも「大丈夫、またなんとかなるさ」――米国の強さを学べる本
2009年ごろ米国の労働生産性が四半期で6%以上上昇したことがあった。理由は簡単で、生産性の低い仕事をどんどん切り捨てているからだ。リストラされた労働者は需要のある産業で再チャレンジしているのである。 - 労働時間に関する話のたたき台――『貧困化するホワイトカラー』
「法律さえ制定すれば、問題はすべて解決!」――は本当なのだろうか。労働時間に関する話のたたき台となる『貧困化するホワイトカラー』を読んでみよう。 - 『代表的日本人』――リーダーはどん底に生きる
ビジネスに効く1冊の本質を、3秒で理解できるようにチャートでご紹介する書評連載。第1回は内村鑑三(うちむら・かんぞう)の『代表的日本人』です。 - 選挙の前に読んでおきたい本&目を通しておきたいWebサイト
もうすぐ衆院選。期日前投票制度を利用してもう投票しちゃったという人もいるかもしれないが、日曜日当日の投票の人はまだ少し時間がある。どうせ投票するなら、ちょっと考えて投票するのもいいかもしれない。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.