CDMAサービス開始10年で4000万の大台へ――韓国の携帯電話史を振り返る韓国携帯事情(2/2 ページ)

» 2007年01月09日 18時57分 公開
[佐々木朋美,ITmedia]
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発展期の2000〜2002年代

photo Samsung Electronicsによる「SPH-M2000」。8Mバイトのフラッシュメモリを搭載し、AyncallのWebサイトでワードプロセッサなど多様なソフトを提供していた。当時の価格は1台50万ウォン(約6万円)

 韓国は携帯電話の輸出にも熱心な国だ。2000年ごろには携帯電話の輸出額が白物家電のそれを追い越していた。これを下支えしていたのが、Widetelecom、Telson Information & Communications 、VK Mobileなどの中小韓国メーカーだ。

 Samsung ElectronicsやLG Electronicsといった大企業が掌握する自国を飛び出し、中国やヨーロッパなどで積極的な動きを見せた。しかし、最盛期が過ぎるとブランド力に乏しいこれらの企業は苦戦することになる。VK Mobileの倒産は記憶に新しい(2006年7月の記事参照)

 また、韓国内でもメーカーの再編が行われた。PantechとKTB Networkが、Hynix Semiconductorの子会社だったHyundai Curitelの持分100%を476億ウォン(約60億4000万円)で取得し買収された。これによりHyundai Curitelの経営権がPantechに移ったのである。

 そのPantechは、2006年末に資金難に陥ったため、現在企業再生プログラムを推進中だ(2006年12月の記事参照)

 さらに、このころになると新たな通信方式が採用されるようになってきた。SKTが2002年2月に、KTFが5月に、「CDMA2000 1x EV-DO」のサービスを開始している。SKTは当初、PCMCIAカード型のモデムを差し込んで高速通信を楽しむというWiBroのような使い方を提供。KTFでは現在と同様に、携帯電話のみで高速通信が行えるサービスを展開していた。

 高速化に伴って、ディスプレイのカラー化が一気に進んだ。2002年にはSERI(Samsung Economic Research Institute)調査のヒット商品として、カラーディスプレイ端末がFIFA ワールドカップとともに選定されるなど花盛りだった。またSamsung Electronicsからスマートフォンが、Pantech & CuritelからはGPS内蔵の携帯が発表されるなど機能的にも大きく飛躍した。

photo MONETAフォンサービスに対応した携帯電話、SKY「IM-3400」。MONETAカードをバッテリー部分に差し込む仕組みで、IM-3400には予備も含め3つのバッテリーが同梱されていた

 2001年はSKTの金融サービスである「MONETA」が始まり、普及した時期でもある。当初はクレジットカードとメンバーシップカードの機能を統合したプラスチックカード「MONETAカード」を利用するサービスだった。そのMONETAカードを専用携帯電話の挿入部に差し込み、インターネットショッピングでの決済も行える「MONETAフォン」サービスが開始され、2002年からはSIMカード大の「MONETAチップ」を利用する金融サービスへと発展している。

次世代への突入初期2003年〜

photo SKY初のLG Telecom用端末IM-8500L。中央のホイールキーを回しながらメニュー操作ができるのが最大の特徴だ

 2003年は年明け早々から、Nokiaが韓国のR&Dセンターを廃止、端末供給も行わないと発表。韓国市場からの世界的企業撤退劇があった。端末供給を開始してから約1年半での撤退だったが、Nokiaの工場はいまだ韓国内で稼動しており復活を期待する人がいるのも事実だ。

 またPantechが2005年にSK Teletechを買収したことで、KTFやLGTでもSKYブランドの携帯を利用できるようになった。「It's different」だったSKYのキャッチコピーは現在、「MUST HAVE」に変わっている。

 制度・サービス・インフラ面で大きな変化があったのも2003年ころだ。

 まず、端末販売時の補助金が禁止された(2005年3月の記事参照)。ただし、W-CDMAなどの新技術に対応した端末は除くという条件つきで、結局、2006年3月に補助金が再度解禁(2006年4月の記事参照)。飽和気味の市場でユーザーを取り込める絶好の機会と見た3キャリアは、激しい競争を繰り広げ、他社より有利な補助金額にするため、解禁初期には補助金額が頻繁に変更された。

 また2004年からは番号ポータビリティが段階的に開始されたほか(2005年2月の記事参照)、これと同時に新規加入の場合は識別番号を「010」にするという制度も実施された。

 サービス面ではマルチメディア関連のサービスが躍進。2004年には世界に先駆けて音楽再生が可能なLG Electronicsの携帯電話がLGT用に発売され、大きな人気を博した。しかしこれは著作権問題をクリアしたものではなかったため、その後各団体とキャリア間で話し合いが進められ、現在は3キャリアとも合法的な音楽配信サービスを提供している。

photo SKY初のKTF用端末であるIM-S110K。2006年6月に販売開始され、同8月頃には1日平均2500台が開通したという人気機種だ

 さらに2005年5月からは衛星DMB、2006年初頭からは地上波DMBが開始され、音楽から映像を楽しむ時代へ突入している。

 インフラではHSDPAWiBroといった規格の商用化が2006年に開始されている。HSDPAはSKTとKTFが採用し、WiBroはSKTとKTにより提供されており、現在さまざまな端末やそれに付随したサービスが登場し始めている。

 3Gへの移行に伴い、海外進出や経営の多角化も活発になってきている。以前は中小も含む端末メーカーによる海外進出が活発だったが、現在はキャリアの方も負けてはいない。SKTは米国に「HELIO」として進出し、中国のChina Unicomとの提携も深めている。KTFはNTTドコモとの資本提携を行った。また優れたインフラを通して提供するコンテンツ確保にも力を入れ、芸能関連や映画などさまざまな企業との提携や買収を進めている。

 4000万以上もの加入者を確保した韓国。数年前から飽和状態であることが叫ばれていたにも関わらず、ここまで市場を拡大したことは評価に値する。今後は3Gへの転換や既存ユーザーの流出を防ぐサービスや施策の実施など、数より質が問われることになりそうだ。

佐々木朋美

 プログラマーを経た後、雑誌、ネットなどでITを中心に執筆するライターに転身。現在、韓国はソウルにて活動中で、韓国に関する記事も多々。IT以外にも経済や女性誌関連記事も執筆するほか翻訳も行っている。


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