新デザイン、新UI、新機能……新しさが勝負の韓国市場韓国携帯事情

» 2005年09月05日 19時35分 公開
[佐々木朋美,ITmedia]

 韓国は今、新機種ラッシュの時期を迎えている。最近はどのメーカもほかにはない特徴ある機種をリリースすることにより、他社との差別化を図ろうとする傾向が強まっており、ユニークな携帯端末が続々登場している。中でも特に注目かつ人気の機種を見ていこう。

スタイルで勝負

SCH-B200。衛星デジタル放送をテレビに出力して見られるTV OUT機能もある。このほかMS Office、PDF、JPG、txtのファイルビューア、Trans Flashを搭載

 「Anycall」のSamsung電子からは、衛星DMBに対応した2機種「SCH-B200」「SCH-B250」が一気に販売された。前者はスライド式、後者は折りたたみ式と、開くスタイルは違うものの、どちらも液晶部分が回転して横になる点が特徴となっている。

 折りたたみタイプは、韓国で人気の「横本能」フォンシリーズだ。昨年に発表された「横本能」フォン、それよりややコンパクトな作りの「横本能 II」に続く第3弾で、同社のDMBフォンの中ではこれまでで最も小さい。放送を見ながら電話やSMSの送受信が可能なほか、端末を閉じた状態でも音楽を聴けるMP3機能、33万単語を収録した辞書搭載など、実用性も増している。

 Motorolaからは黒のRAZRが登場している。これは今年2月に初代RAZRの後継機種として発表されたものだ(2月15日の記事参照)。韓国では、SamsungからRAZRに対抗した厚さ14.5ミリのスリムフォン「SCH-V740」が出ている。色展開はシルバーとブラックということで、シルバーしかなかったRAZRはSCH-V740に完全対抗する形となった。

UIが新しい

 Pantech & Curitelは、新しいタイプのリボルバー携帯「PT-S120」を発表している。同機種の最大の特徴は、両方向から開閉可能な点だ。これまでのリボルバー携帯は開いた側から閉じなければならなかったが、PT-S120は両方向から半自動で開閉するので、端末を片手で素早く操作できる。

SKYのIM8500。背面に200万画素のカメラを搭載。カバーを開くとカメラモードとなり、室内では自動的にフラッシュが作動するようになっている

 また端末の天地を認知するswing UIを搭載することにより、電話やメッセージが来た際、たとえ端末を上下逆さに持っている場合でも、それに合わせて上下を回転して表示してくれるので、メッセージ確認などが便利にできる。

 ちなみに同社は8月29日、5月に同社が子会社化したSKYテレテックを合併吸収すると宣言しており、完全に同社のものとする予定だ(5月16日の記事参照)。世界シェア5位および国内シェア1位を目指し、勢いづいている。

 そのSKYからも、新しいUIを採用した「IM8500」がリリースされた。同機種の最大の特徴である「ホイールナビゲーションキー」は、これまでボタンを押すことで行っていたボリューム調節やメニュー移動、カメラズームなどの機能を、中央部のホイールを指でくるくる回すことで行えるようにする新UIだ。

 さらに電話の受け切り、メッセージ、EV-DOサービス「JUNE」、クリアの、頻繁に使う5機能のボタンは別途搭載しているため、ボリューム調節やカメラズームなどをよりすばやく正確に行える。同キーは、IM8500よりも高スペックな「IM8500L」でも採用されている。スライドタイプ流行のきっかけを作ったSKYから、ホイールナビゲーションキーという新たなスタンダードが出るかもしれない。

テレマティクスに新技術

 DMBと同様、新技術として注目を浴びているテレマティクスでは、CYONからGPS専用チップを内蔵した「LG-SV900」が出ている。これまでテレマティクス対応フォンでは、別途のGPSキットが必要だったが、LG-SV900では単独でナビゲーションしてくれるのが特徴だ。

 ナビゲーションにこだわった同機種では、液晶両側についたLEDが光ることで進行方向を教えてくれたり、地図の回転や拡大、縮小などの機能がそれぞれのキーに割り当てられ、楽に利用できる工夫がなされている。このほか羅針盤機能を備え、地下鉄路線図も内蔵している。

常に新しさを模索する市場

 韓国メーカーが市場へ常に提案しているのは「新しさ」だ。カメラやMP3などはすでに定番の機能となっているため、メーカーはそれを超える新しい機能やデザインを提案することでキラーアプリケーションを模索しているようにも見える。またSKYとEVERを除いたメーカーは、国内にとどまらない世界市場を舞台としているため、海外で人気を得た端末が取り入れられることもあれば、折りたたみやスライドなど韓国発のスタイルが世界へ発信されることもある。

 現在、ドイツのベルリンでは家電の総合展示会「IFA 2005ベルリン・ショー」が開催されているが、それに参加しているSamsung電子では双方向でデータのやり取りができる地上波DMBフォンを開発・展示を行うことを発表している。この端末は韓国で人気の「横本能」フォンと同様、画面が横になるデザインとなっている。すでに開発は完了しており、2006年開催のサッカーワールドカップ時にドイツの事業者であるT Systemsと共同で両方向地上波DMBの試験サービスに入るという。

 さらにLG電子でも同展示会に合わせ、Samsungの「横本能」フォンのデザインを踏襲するDMBフォンを開発・展示すると発表した。これはW-CDMAだけでなく、GSMとGPRSにも対応し、SamsungのDMBフォンと同時期に欧州での販売となるという。

LG電子が開発した、W-CDMA DMBフォン。2.2インチのワイド画面に、同社開発のMobile-XD Engineを搭載することで、高画質・高音質で番組視聴が可能だという

 今後、韓国でW-CDMAが本格的に開始されれば、世界的に流通する端末が同時発売ということも多くなるかもしれない。ただし独創性で勝負している市場だけに、韓国ならではの端末も絶えることなくリリースされるだろう。今後も国内の独自路線をたどりつつ、世界的な端末も流通することで、より面白い市場になると思われる。


佐々木朋美

 プログラマーを経た後、雑誌、ネットなどでITを中心に執筆するライターに転身。現在、韓国はソウルにて活動中で、韓国に関する記事も多々。IT以外にも経済や女性誌関連記事も執筆するほか翻訳も行っている。

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