PantechのSKY買収から見える、国内の力関係、国外進出計画:韓国携帯事情

» 2005年05月16日 23時32分 公開
[佐々木朋美,ITmedia]

 5月3日、国内携帯シェアトップのSK Telecom(以下SKT)は、子会社で韓国携帯電話機メーカー4位のSKテレテックの発行済み株式の60%を3000億ウォン(約300億円)で売却するという発表を突如行い、周囲を驚かせた。売却先は同3位のPantechだった。

大型買収で成長したパンテック

 今回渦中のメーカーである「Pantech」と「SKテレテック」は、世界的に有名なSamsungやLGと異なり、日本ではあまり知られていない。しかし韓国では、それぞれ「Pantech & Curitel」「SKY」のブランドで知られる人気の携帯電話メーカーだ。

 SKテレテックの買収を発表したPantechは、元々ページャー(ポケベル)のメーカーとして1991年に設立。1998年には携帯電話への参入を果たしたが、後発ということもあって当初はほかの中小メーカーと同様、MotorolaなどへのOEMや、海外向けの携帯電話生産を中心とする、韓国では無名の携帯電話メーカーの1つだった。

 しかし2001年、同社は大きな転機を迎える。海外で好業績をあげてきた同社は、当時携帯電話市場で3位だった現代グループの携帯電話メーカー、現代Curitelを買収することで韓国市場への参入に成功。国内では知名度の高いCuritelの名を冠した「Pantech & Curitel」というブランド名を採用した。高機能な端末を、ほかのメーカーより低価格で提供することで、セウォンテレコムやマクソンテレコムといった中堅メーカーが次々と破綻していく中でも快進撃を続けてきた。

独自路線で人気のSKテレテック

 一方、売却されることになったSKTの子会社「SKテレテック」は、SKTの端末ラインアップの充実を図るべく1998年に設立されたメーカーだ。あまり知られていないが、元々は当時米国市場でCDMA端末の高い開発実績を持っていた、京セラとの合弁会社でもあった。

 Pantech同様携帯電話市場への参入としては後発になるが、同社のキャッチフレーズ「It's different」にも現れているように、他メーカーとは一線を画す機能やデザインを積極的に採用することで差別化を図り、若者を中心に人気を集めてきた。中でもコンパクトなスライドタイプの携帯電話を韓国で初めて導入した功績は大きく、今や「折りたたみ」に次ぐ韓国携帯電話の新しいスタイルとしてすっかり定着している。

 国内で力をつけたSKテレテックは、さらなる成長を求めて海外市場への進出を検討してきた。しかし競合する可能性の高い京セラがこれに反対したため、2004年にSKTが京セラから同社の株を買い取って完全子会社化。さらに今年に入ってからは、中国企業との合弁で「SKモバイル」を設立し、CDMA方式の携帯電話で中国市場への本格参入を図っていた。

京セラが米国で販売している「SE44」(トライモード)、「SE47」(デュアルモード)と(左)、SKYが韓国国内で販売していた「IM-5400」(右)。じつは同じ製品だ

パンテックとSKTが得るものは?

 そんな両社が突然の買収劇を発表して韓国中を驚かせたわけだが、その目論みは一体何なのだろうか?

 再びの大型買収でPantechが目指すのは「韓国2位の携帯電話メーカー」の座だ。

 業界3位であるPantechの韓国内での、4月末時点でのシェアは11.5%。一方4位のSKテレテックのシェアは5.3%で、両社を合わせると18.3%のシェアを持つ2位のLGに大きく迫ることになる(出展:「世界日報」、Samsung電子調べ)。長年上位メーカーのシェアは大きく変わっていなかったが、今後LGとパンテックの2位争いが一気に過熱するのは必至だ。

 また人気の高い「SKY」のブランドが手に入るのをはじめ、SKTとの関係がより強化されるということも同社にとっては追い風になるだろう。過半数以上のシェアを握るSamsungにはまだ遠いが、世界的なメーカーを相手にどのような戦いを挑んでいくのか注目していきたいところだ。

 一方のSKTは端末事業を手放すものの、引き換えに巨額な売却益を手にすることになる。この売却益を元に、SKTは国内最大級のコンテンツ投資ファンドを設立する予定で、ドラマや映画といったエンタテイメントコンテンツへの投資を積極的に行うようだ。またSKTは現在、米EarthLinkと共同で「SK-EarthLink」というジョイントベンチャーを設立し、MVNOによる米国での携帯電話事業進出を計画するなど、海外の携帯電話事業進出にも力を入れている。売却益の一部は、これら海外事業の推進にも多くの投資が行われる予定だ。

佐々木朋美

 プログラマーを経た後、雑誌、ネットなどでITを中心に執筆するライターに転身。現在、韓国はソウルにて活動中で、韓国に関する記事も多々。IT以外にも経済や女性誌関連記事も執筆するほか翻訳も行っている。

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