3Dプリンターで回路基板を製作、NY発のベンチャーが狙う日本市場日米のビジネス事情の違いを知る(3/9 ページ)

» 2015年08月11日 08時20分 公開
[公文紫都ITmedia]

ニューヨーク大学技術工科大学院で出会った友人、教授らと創業

関: それはとても興味深い意見ですね。ところでニコラスさんは、どうしてSquinkという製品でスタートアップを立ち上げようと考えられたのですか?

ニコラス: それをお話する前に、少しだけ私のバックグラウンドを説明させていただきます。私は出身国であるベルギーでロボット工学を学び、電気機械工学の修士を取ってから、2つめの修士を取りに米国に来ました。米国では、ニューヨーク大学(NYU)の技術工科大学院に入り、ワイヤレスコミュニケーションを専攻しました。学生時代からたくさんの電子部品を作ってきたのですが、いつも課題としてあったのが、“手戻りの多さ”。

 電子回路は、設計がうまくいっていないと予測に反する動作をするものなので、失敗すると、部品を再注文せざるを得ないこともあります。そして到着を待ち、また間違えてしまうと、部品の再注文や設計のやり直しなどの工程が発生します。こうした作業に時間を取られ、開発サイクルが長くなってしまうのが問題だと感じていました。

 そんな時、NYUで共同創業者のカール(CTOのCarlos Ospina Tarazona氏)と出会いました。カールは、あるプロジェクトで同じチームになったクラスメートです。そのクラスには8つのチームがあり、皆で同じものをデザインしようという課題が与えられました。この時、私とカールは「基板をなるべくシンプルにしよう」と決めたのです。シンプルな基板(汎用的なパーツを多用すること)は、小型化しにくいというデメリットがある一方、万が一何か問題が発生した時でも、わざわざ部品を調達し直すことなく、自分たちで“ハック”し調整可能というメリットがあります。そうして2カ月かけて設計の仕方を学びながら、電子回路を作っていきました。

 その結果、どのチームも必ず何かしらの間違いを犯し、うまく動作しないために電子部品の再発注を繰り返していました。対して私たちは、汎用的な部品を多用したので、見た目は非常に汚らしくなりましたけれど、なんとか動かすことはできました。電子部品の再発注を繰り返しているチームの中には、到着が間に合わず、課題の締め切りを過ぎてしまったところもありました。

 この時の経験が、私たちのビジネスの基盤になりました。その後、3人目の共同創業者としてNYUの教授(Michael Knox氏)に加わってもらい、彼と非常に長い間ブレインストーミングをし、より具体的なイメージへと発展させていったのです。

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