アップルやマクドナルド、グーグルなどのグローバル企業は、いまや落ち目になった国家を尻目にどんどん強大になっている。低税率国の子会社を使った租税回避を行っていたり、低賃金で労働者を搾取し、法律を自分の都合のいいように変えるなど、やりたい放題やっているように見える。
一方で、先進国の中間層は没落し、多くの人がグローバル化の名目のもと、時給で働く労働力として使われ始めている。民主主義はもはや機能していないのだろうか。人々が幸福になれる未来は来るのか。
書評を中心としたブログを運営しアルファブロガーとして知られる元技術者の小飼弾さんと、元アップル管理職の松井博さんが語り合った。全7回でお送りする。
小飼弾(こがい・だん)
東京都出身。1991年12月米カリフォルニア州立大学バークレー校中退。その後帰国し、ネットワーク技術者として活躍。1996年ディーエイエヌを設立し、代表取締役に就任(現任)。1999年オン・ザ・エッヂ(現ライブドア)の取締役に就任するも、2001年に同社取締役退任。著書に『小飼弾の「仕組み」進化論』(日本実業出版社)、『空気を読むな、本を読め。小飼弾の頭が強くなる読書法』(イースト・プレス)ほか。Twitterアカウントは「@dankogai」。
松井博(まつい・ひろし)
神奈川県出身。沖電気工業株式会社、アップルジャパン株式会社を経て、2002年に米国アップル本社の開発本部に移籍。iPodやマッキントッシュなどのハードウエア製品の品質保証部のシニアマネージャーとして勤務。2009年に同社退職。ブログ『まつひろのガレージライフ』が好評を博し、著書『『僕がアップルで学んだこと』『企業が「帝国化」する』(アスキー新書)を出版。Twitterアカウントは「@Matsuhiro」
松井:僕は最近、アップルやグーグルなどの企業が「帝国化」しているという本(『企業が「帝国化」する』)を書いたのですが、自分自身が勤めている間はアップルのことを“帝国”と思ったことはなくて、まあ世の中とはこういうものかなという感じで働いていました。
ところがアップルを辞めて起業して、無収入時代が6カ月くらいあったんですね。そこで生活費を抑えようと工夫を始めたところ、食や医療やエネルギーなど「基本的なモノ」の選択肢がとても少ないことに気が付いたんです。
まず、我が家は健康保険の加入に苦労しました。ちょうどオバマ政権が誕生した2009年、健康保険が話題になっていたころです。保険会社などによる企業のロビー活動の結果、庶民が健康保険に加入できるかどうかは保険会社の胸先三寸といった状態でした。しかも保険料が非常に高い。また健康保険だけじゃなくて、アップルやマクドナルド、エクソンモービルなどが、生活の基本的なところを抑えて莫大な利益をあげていました。
そういう実態がだんだん分かってきて、「これは、なんだかスゴいことになってないか」というのが気付きの第一歩でした。
米国では実質的に企業が政治家を選んでいるんです。政治活動はお金がないとできないので、結局、どこの陣営も企業に札ビラで顔叩かれて選挙を戦うわけです。だから米国の国民には「黄色いクルマか赤いクルマか」くらいしか選択肢がない。
そのうちアップルの中国工場(フォックスコン)での自殺問題(社内で自殺者が出たので、労働環境が問題視された)などが報道されて、民主主義が機能してないなと思うようになってきました。その後どうなるのか、いろいろ考えていますが、このままさらに企業が強くなるのかなと思っています。
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