しかし、私にはまだ心配なことがある。今回のJR東日本の説明会見と、誤解された報道によって、事故がまるで運転士個人のミスによるものと断罪されかけたことだ。どんな企業でも、個人の不手際によるリスクを抱えている。だからこそ、リスクを最小限にするために、業務手順などを改善する。それなのに善処したつもりの従業員を「コイツが悪かったんです」とお白州に差し出す結果になってしまった。ひどい話だ。
従業員に悪意が無かった場合、企業はそれを個人の原因ではなく、業務手順や組織のあり方の不備として対処してほしい。ミスをかばってくれない会社に対して、当人だけではなく、多くの従業員は不信を募らせるだろう。小さな不信や不満の集積は、いつかモラルハザードを生む。それは会社全体を密かにむしばむ。JRグループは国鉄時代のさまざまな労働問題の中で、それを学んだはずではなかったのか。
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JRの運転士が「水を飲んだら報告」だった理由Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
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