ビックリマンは関西気質? イラストレーターが語るキャラ誕生秘話一大ブームの仕掛け人たち(2/3 ページ)

» 2016年02月04日 08時00分 公開
[米澤稔ITmedia]

アナログ作業にこだわる理由

 筆者は当時まだ30歳すぎと若く、性格もストイックだったので、線画一つをとっても異常なこだわりを持って仕事をしていました。本当に1本1本の線に魂を込めて描いていました。あまりにストイックすぎて、線画に集中しているときは「寄って来るなオーラ」を出していたらしく、スタッフの誰も寄り付きませんでした……。

 キャラを線画で描くときはもちろん、キャラの発想をしているときもかなりのめり込んで集中していました。大げさに言うと毎回、自分自身を壊さないと面白いキャラは発想できないのです。これは今も変わりません。そのために、いろいろな物を見たり、音楽で刺激を受けたりしながら自分を追い込みました。

 実際、あの太い線画は普通に一筆で描くより数倍の時間がかかります。キャラによって制作時間は変わるので、あくまで目安ですが、通常のキャラで半日〜1日、サイズが大きくて細かいヘッドキャラならば2〜3日はかかっていました。

ヘラクライストのラフスケッチ(出典:飛鳥新社「ビックリマン原画大全」) ヘラクライストのラフスケッチ(出典:飛鳥新社「ビックリマン原画大全」)
ヘラクライスト ヘラクライスト

 下絵の線を下書きに、狙いどころに線画をきれいに描かなければなりません。例えば、目の線画は描く部分がちょっとずれるだけで表情が変わります。本番の筆入れは、一筆ごと息を止めて集中しなければ、満足できる線を描けないのです。

 仕事でPCを使うようになってからも、このアナログの線画作業は続けています。下書きをスキャンして、PCソフトでパス原稿として描くほうが楽でキレイな線は描けるのかもしれませんが、やはり書き手の「魂」までは描けません。ビックリマンファンの方には、その差は見抜けるはずです。アナログの線画作業は体力が許す限り、続けないとダメだと思っています。

 線画が許容範囲の仕上がりでも、線がきれいでなかったり、線の強弱の関係で表情が思い通りにいかなかったりすると、やり直しを求めたこともありました。当時は色塗りもアナログ作業で、アニメのセル画みたいな仕上がりにしていました。フィルムにスミの線画があって、それを裏側から特殊な絵の具で重ね塗りのような作業を繰り返して仕上げるのですが、これも色が思った仕上がりでなければ容赦なくボツにしていました。あまりの過酷な要求に数人会社を辞めていきました。

 でも、そのストイックな仕上がりがあったからこそ、ビックリマンシールのキャラクターたちが30年経っても色あせなくて残っているのかもしれません。

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