日本ではあまり馴染みがないが、海外では政治家や企業が自分に有利な情報操作を行うことを「スピンコントロール」と呼ぶ。企業戦略には実はこの「スピン」という視点が欠かすことができない。
「情報操作」というと日本ではネガティブなイメージが強いが、ビジネスにおいて自社の商品やサービスの優位性を顧客や社会に伝えるのは当然だ。裏を返せばヒットしている商品や成功している企業は「スピン」がうまく機能をしている、と言えるのかもしれない。
そこで、本連載では私たちが普段何気なく接している経済情報、企業のプロモーション、PRにいったいどのような狙いがあり、緻密な戦略があるのかという「スピン」を紐解いていきたい。
女優の吉田羊さんから「意気地なし!」と一喝されてしまいそうな人がいかに世に多いかということだろう。
4月1日からスタートした電力小売りの全面自由化。経済産業省によると、3月23日時点での契約切り替えの申し込みは33万3700件で、対象とみられる6260万件のわずか0.5%。つまり、「しばらく様子を見ようと思っている」という人がまだまだ圧倒的に多いようなのだ。
最初はそんなもんでしょという声はあるかもしれないが、新電力会社として660以上の事業者が登録したことや、各社のCM合戦を考えると、やはり盛り上がりに欠けるという印象も否めない。
この理由は明快で、「ユーザーメリットが見えない」ということに尽きる。
冒頭で紹介した吉田さんが出演するENEOSのCMも強烈なインパクトだが、ユーザーメリットはほとんど伝わらない。切り替え先の最有力候補・東京ガスにしても、漫画『キャプテン翼』の作者・高橋陽一さんが、「副キャプテン自由化」というマンガを描いたり、芸人の鬼奴さんがヘアスタイルをまとめたりと、とにもかくにも「ふわっ」とした内容が多い。
情報番組なんかでも経済評論家のみなさんが登場し、「お得な切り替え方法」をフリップで紹介しているものの、電子マネーのポイントが貯まりますとかかなり細かい話が多く、「賢い奥様の節約術」の域を脱していない。比較検討や煩雑な事務手続きの労力を上回る「メリット」が見えないのだ。
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