が、この民衆の怒りを一蹴した「電力の鬼」がいた。東京電力の生みの親である松永安左エ門である。「電気事業の自立なくして日本復興はありえない」と主張して値上げに踏み切った松永は、いまの学生団体「SEALDs」よりも発言力があった消費者団体からの批判に対して、このように訴えた。
「電力再編成で九頭の乳牛が生まれた。適正な料金を払うのはえさを与えることだ。えさを十分与えないと長く国民を養ってくれる乳は取れない」
要するに、日本の産業を支えるエネルギー事業が軌道に乗るまで、国民は歯を食いしばって我慢せよというわけだ。もちろん、「はい、そうですか」という人ばかりではない。松永の自宅には、「殺してやる」という殺害予告がバンバン届く。いつ暴徒が押し寄せても隣家に逃げこめるような脱出経路もつくったという。
もしいまの世相の中で政治家や財界人が、松永のような主張をしたらフルボッコにされるのは間違いない。「電気事業の再編なくして日本復興はありえない」なんて少しでも口走ろうものなら、自宅前には「市民」大集合、ネットには殺害予告が溢れかえる。
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