7.5兆円を奪うのはどこか?2016年、電力自由化“春の陣”

電力切り替えのテレビCMは、なぜ「ふわっ」としたものが多いのかスピン経済の歩き方(2/5 ページ)

» 2016年04月05日 08時00分 公開
[窪田順生ITmedia]

「なんとなくお得」というイメージ訴求

 ただ、これもしょうがない部分がある。

 メリットが見えないもなにも、電力自由化というのは、一般家庭へのメリットというものはほとんどない。存在しないものはアピールできないので、どうしても「なんとなくお得」というイメージ訴求になってしまうのだ。

 なんてことを言うと、「電力小売自由化にイチャモンをつけているのか」と思われるかもしれないが、そんなことはない。良い悪いという話ではなく、今回の全面自由化は必ずしも「電気代が安くなる」などの消費者メリットにつながらないということを申し上げたいのだ。

 例えば、日本と同じ島国で電力供給の環境が似ていることから、よくひきあいに出される英国では1998年に企業向け、その翌年には家庭向けを含めて電力小売の全面自由化に踏み切った。当初は、新規事業者が増えて価格競争が激化、買物できるクーポン配布などのサービスも充実した。しかし、ほどなく電気料金が上昇し、2014年にいたっては、自由化前のおよそ2倍にまで跳ね上がってしまうのだ。それだけではない。各社が自由に料金プランをつくったため、400種以上の料金体系が世に溢れて大混乱となったのだ。

 そんな状況を聞くと、「いったい電力小売自由化なんて誰のためにやるのさ」と首をかしげるかもしれないが、ちゃんと意味がある。

 それはぶっちゃけ、「エネルギー産業発展のため」である。

 いくら小売りを自由化にしても、火力・水力発電所、送配電網の新設は自由でない。太陽光やら風力という再生可能エネルギー発電の普及率もそれほどではない今の状況では、結局、限りある発電量を奪い合い、いかに中間マージンを削れるかというチキンレースになる。

 それを象徴するのが、「新電力大手」といわれた日本ロジテック協同組合の電力事業撤退だ。

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