結局のところ、オバマは「ヒロシマ」を訪問できるのか世界を読み解くニュース・サロン(2/5 ページ)

» 2016年04月14日 08時00分 公開
[山田敏弘ITmedia]

広島訪問の期待感が高まっている

 オバマはこれまでに、日本を3度訪問している。そして今年はこれまで以上に広島訪問に向けた期待感が高まっているように感じられる。

 その最大の理由は、ガテマラー米国務次官やルース元大使のコメントとは別に、米政権内でオバマの広島訪問が検討されているという事実が漏れ伝わっているからだ。しかも米メディアの取材に答えた政府高官によれば、オバマは伊勢志摩サミット出席後に、数時間ほど広島を訪問して、スピーチを行うという具体的な話も出ている。

 それに加えて、ほかにも広島訪問の現実味を高める要素がある。

 まず今年いっぱいでオバマの大統領任期が終了することだ。オバマは3月20日、現職大統領としては88年ぶりに対立していたキューバを訪問したが、これは、大統領として成果を残す「レガシー作り」とも見られた。キューバ訪問は歴史的に見てオバマ政権の偉業の1つとして認識されることになるが、さらに米大統領として初めて広島訪問が実現すれば、ホワイトハウスを去る前に、彼にとってまた別の大きな偉業となる。

 また今年は、「核兵器」への注目が高まっている年だと言える。2015年にイランによる核開発の平和的解決に向けた核合意がなされ、2016年1月にイランへの経済制裁が解除された。また北朝鮮が「水素爆弾」と主張する核実験も2016年に入って話題になった。そして2016年3月31日からは、オバマが米ワシントンD.C.で核セキュリティ・サミットを開催。サミットでは、国際社会が協力して核を使ったテロに対処するとの合意文書を採択した。

 このサミットは、オバマがチェコ・プラハで行ったスピーチをきっかけとしてスタートした、オバマの核兵器政策にとって象徴的な会議だ。2009年4月当時、まだ大統領に就任して間もなかったオバマはそのスピーチで核のない世界を目指すと語り、世界から絶賛された。

 そしてこのスピーチがきっかけとなり、オバマはノーベル平和賞を受賞している。ノーベル委員会による受賞理由は、「(オバマの)核兵器のない世界というビジョンは、軍縮と軍縮交渉を強く活性化させる」というものだった(参照リンク)。オバマは就任直後のこのスピーチから2期8年を経て、任期終了を目前にした今年、広島を訪問して首尾よく退任する――できすぎたシナリオだろうか。

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