潘基文の最大の功績は? 国連が変わるかもしれない世界を読み解くニュース・サロン(3/4 ページ)

» 2016年04月21日 08時00分 公開
[山田敏弘ITmedia]

無能の事務総長が生まれたワケ

 だがよくよく考えれば、現事務総長がそんなふうにしか見られていない責任は、そもそもその任命を担う安保理の常任理事国にあると言える。さまざまな思惑の中、“密室”で自分たちに都合のいい事務総長を決めてきたからこそ、無能と言われる事務総長が生まれてしまうのだ。

 事務総長の資格とは、国連の作業言語である英語とフランス語をしゃべれるということくらいだ。第三者的に調査されることもないまま“密室”で選ばれることから、世界73億人に影響力を与えることができる国連の事務総長を選ぶのにこんなやり方でいのか、という批判の声がこれまでも上がっていた。もう安保理のパペット的な事務総長はいらない、ということだ。

 そこで今回から候補者選びの方法が変わった。2015年、国連は事務総長選出方法の活性化を採択し、加盟国に書簡を送って候補者を出すよう求めた(参照リンク、PDF)。そして2016年4月に国連総会で、候補者の意思を聞く公聴会が史上初めてオープンで行われたのである。

 これは潘時代までの悪しきやり方からの決別であり、史上初の画期的な改革の始まりだと期待する声が上がっている。

 第70回国連総会議長のモーエンス・リュッケトフトは、質疑応答などの取り組みが事務総長の選出方法を改善すると胸を張る。リュッケトフトは、「新しい事務総長の選出と任命のプロセスは本当に透明性と開放性の原理によって導かれている」と語っている。

 そして、常任理事国が最終的な選出に強い立場を維持するのは今も変わらないが、新たに始まった試みによって安保理以外の国連メンバーから候補者が出されることで、その声は、安保理の常任理事国の力を超えるような影響を与えることになる可能性があると述べている。

 皆が候補者を選べるだけでも大きな進歩であり、国連改革におけるひとつのスタートとしては評価できるだろう。そして、そういう中で生まれる新事務総長が、さらなる国連改革を断行するという期待もできる。

選挙によって国連が大きく変わるかもしれない(出典:国連)

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