日本は、福島原発事故以後、その電力のほとんどを火力発電に頼っており、その割合は88.4%になる。燃料はLNG(液化天然ガス)や石油、石炭などだが、そうした化石燃料費は震災前から倍増している。そして現状では、原子力発電所を止めたことで失われた電力容量を埋め合わせるために、今後も供給や価格が不安定になりかねない火力発電などに頼り続けなければならなくなる。
確かに、電力自由化によって発電におけるイノベーションがこれまで以上に研究・開発され、新技術が生まれたり効率化が進めば、日本におけるエネルギー事情の先行きは明るくなるのではないか。
発電という意味では、既存の原子力発電に頼れないのは痛手である。ならば、原発再稼働の行方を横目に見ながら、電力自由化という規制緩和で新たなイノベーションを推進する好機にすればいい。そして、技術力によって世界のエネルギー業界で存在感を示せるようになる可能性もある。
そうすれば、将来的にそれこそが電力自由化の最大の功績だった、と言えるようになるかもしれない。電力分野のイノベーションに期待したい。
山田敏弘
ノンフィクション作家・ジャーナリスト。講談社、ロイター通信社、ニューズウィーク日本版に勤務後、米マサチューセッツ工科大学(MIT)でフルブライト研究員を経てフリーに。
国際情勢や社会問題、サイバー安全保障を中心に国内外で取材・執筆を行い、訳書に『黒いワールドカップ』(講談社)など、著書に『モンスター 暗躍する次のアルカイダ』(中央公論新社)、『ハリウッド検視ファイル トーマス野口の遺言』(新潮社)がある。
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