かつて私は、とあるWiiのパーツのネーミング案について、超ベテランのデザインマネージャーに相談しました。そのネーミング案は素晴らしいものだと私自身は感じていたのですが、誰に話しても首をひねられる、そんなことの繰り返しでした。
そのマネージャーは、私にこう切り出しました。
「なぜその名前が良いと思うの?」
私は懸命に答えます。すると、次にこう言います。
「ちょっと待って。今の話にはいろいろな情報があって、『なぜその名前が良いのか』の理由以外のものも入っているように聞こえた。一言で言うと、どうなる?」
「一言では答えられません。理由は3つあって、それぞれが大事です」
「それだ! さっきの質問の答えは『良い理由が3つある』だ」
この時点で、私は狐につままれたような感覚に陥りました。理由が3つあること、それは話を整えるだけのクッションや補強材でしかなくて、議論の本質とはまったく関係のないことだ。そう思えました。
しかし、ここからマネージャーはさらに話をブレイクダウンして、細かなパーツへと分解していきました。たった1つのネーミング案について、私の説明を分解し、接続し、平易なロジックに落とし込む。それだけの作業は、ゆうに2時間を超えていました。しかし、2時間という時間を経た後、私のネーミング案は見違えるように分かりやすく、伝わりやすくなりました。実際、岩田さんにお話したときも「はい、分かりました」と、ものの数秒で伝わったのです。
今思い返すとやっと言葉にできるのですが、このデザインマネージャーがしてくれたことは、私のネーミング案がいかにデザインされているかを言語化したことにほかなりません。誰かにネーミング案の話をするとき、聞き手はどんな気持ちになっているか。私の説明を聞きながら、聞き手はどんな予想を立てるか。そして、聞き手の予想を裏切らない情報設計になっているか。話し終わった後、聞き手はそれをどんな風に自分の言葉で表現し、どんな行動をするか。
「私の話が良いか、正しいか」ではなく「聞き手はその話でどんな体験をするか」のデザイン。それが、デザインマネージャーがしてくれたことだったのです。
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