少子高齢化もなんのその 島村楽器の業績が好調なワケ水曜インタビュー劇場(楽器公演)(2/7 ページ)

» 2016年06月22日 08時00分 公開
[土肥義則ITmedia]

知識はそれほど重視していません

土肥: 子どもの数が減少しています。「楽器を買う」「楽器を習う」というのは子どもが多いので、島村楽器の業績は厳しいだろうなあと思っていたら、逆に伸びている。前回、店が増えている理由を聞いたところ、「店舗のレイアウトだけではない」と話されました。では、どこに要因があるのでしょうか?

伊地: 音楽教室に通われている生徒さんの年代をみると、10年前と比べて「子ども」は横ばい、「中高生」は微増。そんな中でも「50代以上」が1.5倍に増えているんですよ。30年前、中高年の人が教室に通われることは珍しかったのですが、いまではごく普通の光景です。「定年前に、楽器を学ぼうと思って」と言って、ギターなどを購入される人が増えてきました。

 あと、売り上げが伸びている要因として、前回は「店舗のレイアウトにあるのでは?」と指摘されていましたが、「人材の育成にチカラを入れている」ことのほうが大きいのかもしれません。

土肥: なるほど。楽器を販売しているので、知識が必要になりますよね。ワタシがギターを買いに行って、店員さんに「どれがいいかな?」という質問に対して、きちんと対応できなければいけません。「このギターの特徴は……ペラペラペラ。ライバルメーカーのギターは……ペラペラペラ」とスペックなどを説明できなければいけません。つまり、楽器の知識を徹底的に教育されている?

伊地: いえ、知識はそれほど重視していません。もちろん、知識はあればあるほどいいのですが、社内ではあまり強く言っていません。会社から「楽器の知識を身につけなさい。これとこれを覚えて、来週テストをするから」と言われても、嫌ですよね。お客さまから質問されて、その場で「分かりません。いまから調べます」といった対応でも、会社としては“よし”としているんですよ。

 お客さまの中には、そうした対応に「まどろっこしいなあ」と感じられる人もいるかもしれませんが、すべての楽器を把握することは難しい。であれば、誠意をもってお客さまと接することが大切だと思っています。

 創業者の島村元紹(現在は会長)は、近江商人の商売十訓のひとつをよく言っています。「客の好むものを売るな、客のためになるものを売れ」と。

土肥: 言葉の意味は分かるのですが、この言葉を仕事にどのように生かしているのでしょうか?

業績好調の要因は店舗のレイアウトだけではなく……

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.