日本ではあまり馴染みがないが、海外では政治家や企業が自分に有利な情報操作を行うことを「スピンコントロール」と呼ぶ。企業戦略には実はこの「スピン」という視点が欠かすことができない。
「情報操作」というと日本ではネガティブなイメージが強いが、ビジネスにおいて自社の商品やサービスの優位性を顧客や社会に伝えるのは当然だ。裏を返せばヒットしている商品や成功している企業は「スピン」がうまく機能をしている、と言えるのかもしれない。
そこで、本連載では私たちが普段何気なく接している経済情報、企業のプロモーション、PRにいったいどのような狙いがあり、緻密な戦略があるのかという「スピン」を紐解いていきたい。
東京都知事選に出馬したジャーナリスト鳥越俊太郎さんが、『週刊文春』に「女子大生淫行」疑惑をかけられている。
真相は定かではないが、このあたりの「身体検査」がないがしろだったのは、鳥越さんの抜群の知名度もさることながら、最近の選挙における「ジャーナリスト候補」の善戦ぶりがある。
例えば、先日の鹿児島県知事選挙で自公推薦候補をはねのけた三反園訓さんはテレビ朝日の政治記者。先の参院選でも、厳しいといわれた神奈川選挙区で当選を果たした民進党の真山勇一さんも長く日本テレビでキャスターとして活躍された。
そんな追い風にダメ押しをしたのが、TBSの解説委員だった杉尾秀哉さんの勝利だ。まったく縁もゆかりもない長野県で落下傘候補として戦った杉尾さんの応援ポスターには、鳥越さんが登場した。通常、この手のポスターには党首や知名度の高い幹部が出るのが一般的だが、鳥越さんとのツーショットによって「ジャーナリスト色」を全面に押し出したことが功を奏したのである。
民進党きっての人気者と言われた蓮舫さんですらガッツリ票を減らした参院選で、ジャーナリスト候補がここまでの成果を出せば、野党4党が「鳥越さんなら勝てるのでは」と淡い期待を抱くのも当然だろう。
さらに言えば、野党連合の中心である民進党がここぞという大一番で、「ジャーナリスト候補」に頼るクセがあることも大きい。政権交代を果たした2009年の衆院選では、親しいマスコミに片っ端から声をかけて20人以上を候補に立てたほどだ。
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