会見場でイチローが発した地元マイアミのメディアでも当然のように大きく扱われた。地元テレビ局の『FOXスポーツ・フロリダ』はこれらの言葉を英訳とともに番組内で同日の「速報」として放映し、出演したアンカーが「イチローはプレーだけでなく発言でも我々をいつも驚かせ、そして感動させてくれる。まるで野球の教科書のような素晴らしいレジェンドをマーリンズは永遠に手放してはいけない。ミスター・イチロー、あなたは生涯マーリンズのレジェンドだ」と真剣な表情で画面を通じてメッセージを送るワンシーンまで見られたほどだった。
実際のところ、このイチローの「生涯マーリンズ」は希望的観測ではなく球団の中で“規定路線化”しているようだ。昨年10月にマーリンズと1年200万ドル(約2億500万円)、2017年は契約選択権付きの内容で契約を更新。しかし「1年契約」とはいうものの、球団側はこの先もイチローを手放すことは考えてはいない。
イチローは現状で言えば、クリスチャン・イエリッチ、ジャンカルロ・スタントン、マルセル・オズナの3人に次ぐ外野手4番手。24〜26歳の年齢で将来を嘱望される若い3人が優先的に先発起用されるのは、チーム事情を考えるとやむを得ない部分もある。それでも球団側はイチローの存在を高く評価し続けている。
メジャー最年長野手のイチローに対し、正外野手の3人を含め若いチームメートたちが「ロール・モデル(お手本)」として尊敬の眼差しを向けているからだ。背番号51が模範的存在となって、それに連動するかのようにチーム全体の士気が向上し、弱小だったマーリンズが“リアル・プロフェッショナル”へと徐々に生まれ変わってきているのである。
2013年は球団史上2度目の100敗を数え、3年連続ナ・リーグ東地区最下位。翌2014年も地区4位に沈んだ。しかしイチローを迎えた1年目の昨季こそ借金20で地区3位だったが、少しづつ順位を上げていき、ここまで今季は貯金を積み重ねて地区2位で公式戦の終盤を迎えようとしている。
地区首位のワシントン・ナショナルズとは差があるものの、ワイルドカード争いにも食い込んでいることから実に13年ぶりとなるポストシーズン進出も現状で十分に狙える位置にいる。これも“イチロー・イズム”がチームにいい形で浸透しているからと言っていいかもしれない。
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