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» 2016年08月24日 05時30分 公開

「プロフェッショナルな仕事」とは何か「売れる商品」の原動力(3/5 ページ)

[井尻雄久,ITmedia]

「プロフェッショナルな仕事」とは何か

 情熱ということについて、私自身が「お金をいただいて仕事をする」上での原点になっている出来事をお話ししましょう。

 実は私は、高校3年生のころまでは建築デザイナーになりたいと思って、美大を目指してアトリエにも通っていました。ところが高3の5月に父親を亡くしたことで、お金のかかる美大をあきらめ、夜間の学部に進学し、学生時代からアパレル企業の営業の現場で働くようになりました。

 当初は、その会社が土日に開催していたファミリーセールを手伝うアルバイトをしていました。そのうち、「平日の昼間もうちで働かないか」と声をかけていただき、営業社員のサポートとして入ることになったのです。

 他の社員と全く同じように、スーツを着て名刺を持ち、朝の8時半から夕方の5時まで勤務しました。取り扱ったのは紳士のインナーです。ほどなく、週のうち2日か3日は私が取引先に出向くようになりました。

 その中の一軒に、東急ストアの高井戸店がありました。あれは大学2年の頃だったので、私がまだ20歳くらいだったと思います。恐らくワゴンセールのお手伝いか何かで出向いた際、当時の高井戸店の店長だったかマネジャーだったか、そういう立場の方とお昼をご一緒していたときのことです。私が学生のアルバイトだということも知ってくださっていて、社会人の先輩としてさまざまなアドバイスをしてくださいました。

 その方の話で私の胸に響いたのは、「たとえアルバイトであろうと社員であろうと関係なく、時給が1000円だろうと500円だろうと仮に1円であろうとも、“お金をいただいて”仕事をする以上、それは“プロフェッショナルの仕事”でなければいけない」ということでした。

 以来、このことは今に至るまで、トータルにすれば四半世紀以上私がお金をいただいて仕事をしてきた中で、片時も離れず心の中にあります。

 プロフェッショナルの仕事――これは、どんな立場であり、どんな仕事であっても絶対に必要なことだと思います。

 例えば新入社員になって、お茶を出すということを頼まれるかもしれない。あるいはゴミ箱を片付けるとか、コピーをとるとか、封筒に切手を貼るというようなさまつに見えることであったとしても、金額がどうであれお金をもらって仕事をする以上は、それはプロの仕事でなければならないのです。

 “プロフェッショナルの仕事”であるとは、まずミスをしないということ。考えられる最善を尽くすということ。そして、先述したように自分に仕事を頼んだ相手が喜びを覚えるものであるということです。

 自分は社員ではなくアルバイトだから手を抜いてもいいとか、新人だからうまくできなくても仕方がないとか、安い給料しかもらっていないのだからそれ相応でいいと考えてしまえば、自分で自分をおとしめてしまうだけだし、自分で自分の人生から情熱を奪っているも同然です。

 もちろん、ミスをしないように心掛けていても、人ですからミスをする場合はあります。それで上司に迷惑を掛けたり、もしかしたらお得意先を怒らせてしまうこともあるかもしれません。自分の失敗ではなく、同僚や部下のミスで自分が責めを負う場面もあるでしょう。

 しかし、それすらもチャンスにできることがあるし、チャンスにしていくべきなのです。誠心誠意おわびをすることは当然として、少なくとも与えてしまった損害の倍くらいは返すという姿勢が必要だと思うのです。

 起きてしまったミスは不幸なことですし、当初は相手も立腹するでしょう。けれども、それを挽回しようとして懸命に努力をすれば、相手も「こういう人に、こういう会社に、仕事を頼んでよかった」と思うかもしれません。もしそれが叶わずとも、こちらには頑張った分だけ新しい力が身につきます。

 立場がどうであろうと、大きな案件でも小さな雑用でも、同じように“情熱”を注いで“プロフェッショナルの仕事”をしてみせる。たとえ失敗したとしても不運にさらされたとしても、より一層の“情熱”を注ぐ。こういう姿勢が大切だと思うのです。

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