土肥: フットマークはこれまで大きな市場を2つもつくられました。1つは「水泳帽子」、もう1つは「介護おむつカバー」。これまでになかったモノをつくって、現在では多くの人が利用されているわけですが、そもそもどういったきっかけで介護おむつカバーをつくろうと思ったのでしょうか?
磯部: 当社は1946年に創業したわけですが、当時の主力商品は赤ちゃん用のおむつカバーでした。
土肥: 赤ちゃん用のおむつカバーをつくっているので、「じゃあ、お年寄り用のおむつカバーでもつくろうか」となったわけですか?
磯部: いえ、そういうわけではありません。介護おむつカバーは1970年に開発しましたが、いまと違って当時は近所付き合いが密でした。例えば、醤油が切れていたら近所の家に行って「ちょっと貸してくれませんか?」と言っていました。気軽にそうした雰囲気が言える時代だったので、お互い家族のことをよく知っていたんですよね。親はこんな仕事をしていて、子どもはこんな学校に通っていて、といった感じで。
ある日、近所に住んでいるお嫁さんがやって来ました。「磯部さんの会社は、赤ちゃん用のおむつカバーをつくっているんですよね。実はウチのおじいちゃん(義父)がおもらしをするようになったので、大きめのおむつカバーをつくっていただけないでしょうか?」といった依頼がありました。
当時の家族構成は、3世代が一緒に住んでいるケースが多かったんですよね。そのお嫁さんは義父がおもらしをするようになったので、とても困っていました。しかし「大きめのおむつカバー」と言われても、私たちは意味がよく分かりませんでした。当時は見たことも触ったこともなかったので。ただ、赤ちゃん用のおむつカバーをつくっていたので、生地を縫うのは得意。言われた通りに、つくってみることに。型紙を大きくしてつくってみたところ、そのお嫁さんに「ありがとうございます!」と言っていただけました。
土肥: 近所に住んでいる人からの要望があって、介護おむつカバーが誕生したのですか?
磯部: はい。当時、赤ちゃん用のおむつカバーをつくっている会社はたくさんありました。でも、そのお嫁さんはウチの会社に声をかけてくれました。なぜか。先ほど申し上げた通り、その家族とは「醤油を貸していただけませんか?」と言える関係にあったからではないでしょうか? 何でも言える関係があったからこそ、この商品は誕生しました。いまの時代だったら、難しいでしょうね。ネットで「おむつをつくっている会社はどこか?」を検索して、上位にヒットした会社がつくっていたかもしれません。
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