「小さな大企業」を作り上げた町工場のスゴい人たち

えっ、「介護」って造語なの? 市場をつくった“生みの親”に聞く水曜インタビュー劇場(アイデア公演)(3/6 ページ)

» 2016年09月07日 07時20分 公開
[土肥義則ITmedia]

「断わる」選択肢はなかった

現在の介護おむつカバー

土肥: なるほど。「醤油を貸してくれませんか?」と言われれば、「はい、どうぞ」と渡すだけ。でも、赤ちゃん用のおむつカバーをつくっているからといって、「大きめのおむつカバーをつくってくれませんか?」と言われると、「面倒だなあ。時間もかかるし、断ろう」と思わなかったのですか?

磯部: そんなことは全く考えませんでした。例えば、引っ越し。いまは引っ越し業者があるので、そうした会社に作業をお願いすればいい。でも、昔は友人や近所の人にお願いしていたんですよね。それが当たり前だったんですよ。助けたり、助けられたり、といった“お互いさま”の文化が根付いていたので、「大きめのおむつカバーをつくってくれませんか?」と言われても、「断わる」という選択肢はなかったですね。理屈の問題ではありません。

土肥: ふむふむ。

磯部: いま振り返ってみると、そのお嫁さんは「大きめのおむつカバーをつくってくれませんか?」とお願いするのに、勇気がいったと思うんですよ。

土肥: どういう意味ですか? 醤油を貸し借りできる仲なんですよね。何でも言い合える、お互いさま文化があったはず。

磯部: それはそうなのですが、当時は「家族の人間がおもらしをする」ということを他人にはなかなか言えなかったのではないでしょうか。いまは行政や民間の会社がいろいろ支援してくれるので、介護に関してオープンな社会になりつつある。しかし、当時はクローズだったんですよね。「家族で体の不自由な人間がいる=恥ずかしいこと」といった雰囲気があったので、多くの人はそのことを隠していました。今が良くて、昔が悪かった、という話ではなくて、当時はそういう時代だったんですよね。おむつの話だけではなく、病気を患っていることを他人に話をする人は少なかった。

 そして、このようなことを考えました。「お嫁さんの義父が困っているということは、全国に同じような悩みを抱えている人が多いのでは」と。マーケティングがどうのこうのといった難しい話ではなくて、直感的にそう感じました。

創業当初の主力商品は「赤ちゃん用のおむつカバー」

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