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» 2016年09月16日 06時30分 UPDATE

杉山淳一の「週刊鉄道経済」:中野電車区事故の教訓 鉄道施設公開イベントで何を学ぶか? (5/5)

[杉山淳一,ITmedia]
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防災、避難時に役立つ知識を得る機会に

 鉄道施設は本来は危険な場所だ。しかし、機会があれば車両基地公開イベントに出掛けてほしい。そこで実物の車両を見て興奮する気持ちも分かる。私もそうだ。一方で、来場者の皆さんにいくつか試してほしいことがある。

 例えば、線路の砂利の上を歩いてみる。とても歩きにくいはずだ。枕木を踏んで歩くほうがラクだと気付く。レールも意外と高さがあって躓(つまづ)きやすいし、枕木とレールの境目も突起がある。もちろん転べば痛い。最近は枕木のような平べったい板ではなく、フローティング・ラダー軌道といって、鉄パイプで軌間を保持する線路もある。このような線路の仕組みや歩き方を経験しておくと、災害時の避難で、やむを得ず線路の上を移動するときの心構えができる。線路上ではベビーカーを使えない。お母さま方、抱っこひもは携帯されていらっしゃるか。

フローティング・ラダー軌道。砂利はないので軌間の外側は歩きやすい。枕木を踏むような歩き方は難しい。そもそも人が歩くために作られていない(出典:鉄道総合研究所) フローティング・ラダー軌道。砂利はないので軌間の外側は歩きやすい。枕木を踏むような歩き方は難しい。そもそも人が歩くために作られていない(出典:鉄道総合研究所

 電車はどうだろう。ホームから上に見える車体はのっぺりとして、身体を傷つける要素は少ない。しかし、地上から乗降扉までは意外と高い。それを知っていれば、電車の中から外へ飛び降りて避難しようなどと思わないだろう。電車の車輪や、床下機器は角が立っている。潜り込めば服や肌が引っかかり、ケガをする。そもそも鉄製だから、ぶつかっただけでも痛い。鉄道が本来は危険な道具であり、扱いを間違えると生死にかかわる。

 プラットホームでスマホ歩きをする人、黄色い線を越えて三脚を置くような不届き者、警報が鳴っているにもかかわらず踏切を突破する人やドライバーは、鉄道が本来持っている危険を理解できていない。

 たしかに鉄道は安全、安心な乗りものだ。しかし誰でも無条件に安全を保証してくれるものではない。鉄道を安心して利用できる。そこには、安全にかかわる多くの職員の努力がある。

 最も危険な人は、危険そのものを理解していない人である。普段乗客が触れない部分は、本質的に危険な場所だ。その危険を学ぶことは重要である。そのためにも鉄道施設公開イベントを実施し「鉄道がいかに安全に取り組んでいるか。安全は常に意識して保つものだ」と学ぶ場になってほしい。

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