引き際の美学を貫いた。広島東洋カープの黒田博樹投手が10月18日、今季限りでの現役引退を表明。広島市内のホテルで記者会見を開き、引退の理由について「日本シリーズの登板もあるので、すべてを伝えるのは難しいが、ひとつはリーグ優勝して日本シリーズに進出ができたことが大きい。最高のシーズンを送れたので全く悔いはない」と述べた。
チームが10月22日から開幕する日本シリーズ進出が決まっているにもかかわらず、このタイミングで引退表明に至ったことについては「シーズンがすべて終わってから、みんなに伝えようと思ったが、日本シリーズ進出も決まり、もしかしたら次の登板が最後かもしれないのでチームメートと、今まで応援してくれた人に自分の気持ちを伝えないといけないと思った」
まだ雌雄を決する最大の勝負が待っていながらも、重大な決断を口にすることは大変な勇気が必要だったであろう。それでもチームメートたちは自分の引退によって「何か」を感じ取り、そして発奮し、さらに一丸となって日本一へとまい進してくれるに違いない。黒田はハッキリと口にこそしなかったが確かに、そう考えてもいた。
同じベテランで2歳年下の新井貴浩内野手にのみリーグ優勝を果たした後、今季限りでユニホームを脱ぐ決意を固めたことを打ち明けていたという。新井とはカープで長きに渡り、投打に分かれながらチームを支え合った戦友。一度別離する前の2007年シーズンまではカープの暗黒時代もお互いに経験し、苦楽をともにした。そして奇遇ながらもこの2007年シーズンが終わった直後のオフ、自身はメジャーリーグのロサンゼルス・ドジャースへ移籍し、新井もFA権行使によって阪神へ新天地を求め慣れ親しんだカープを去った。
しかし気心が知れた仲間だからこそ、再び同じユニホームを着てプレーする日がやって来た。2014年オフ。黒田はメジャーリーグから古巣カープへ戻る決意をした際、実は広島のフロントに「新井を何とか戻してやってください」と頭を下げながらお願いした。このころの新井もまた黒田同様に古巣復帰を熱望してはいたものの、7年前にFA権を行使し阪神へ移籍してからは松田元オーナーの怒りを買ってしまい、大きなわだかまりが残っていると見られていたのだ。
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