私たちは広島「黒田博樹」から、何を学べばいいのか赤坂8丁目発 スポーツ246(2/4 ページ)

» 2016年10月19日 11時00分 公開
[臼北信行ITmedia]

何度も頭を下げながら猛プッシュ

 そうした流れもあって2014年シーズンオフ、当初の新井は古巣復帰が困難であることを悟り、阪神から出場機会を求めて東北楽天ゴールデンイーグルスへの移籍が決まりかけていた。しかしながら関係者の話を総合すると、黒田は諦めることなく松田元オーナーに直談判し「新井を獲得してくださいませんか。彼は自分同様、カープの苦しい時代を知るベテラン。彼が加入すればチームにとてつもないプラスアルファが与えられることになるでしょう。もし、それができるのであれば私は間違いなくカープに復帰させていただきたいと思います」と何度も頭を下げながら猛プッシュしていたというのである。

 これには松田オーナーも「黒田がそこまで新井にお墨付きを与えているのならば、本当に大きな安心材料だ」と感服していたとも聞く。再び新井をチームに迎え入れられるように裏で必死に奔走していたのは、実を言えば黒田だったのである。

 絶対に自己中心的な性格などではなく常に冷静沈着で周囲がよく見えている。そして場合によっては友のため、こういう犠牲的精神もいとわない。これらこそ黒田が「男気」と評される所以(ゆえん)だ。それは日本だけでなく、メジャーリーグでも共通している。

 筆者は黒田が古巣カープヘと復帰を果たした1年目、15年シーズン中、数人のメジャーリーグ選手とメジャーリーガー関係者に現地米国でインタビューを試みている。例えばロサンゼルス・ドジャースの元監督で黒田とは移籍1年目の2008年から10年まで同じユニホームを着ていたジョー・トーリ氏は黒田の人物像について次のように明かしていた。

 「ヒロ(黒田)は素晴らしい。チームメートからも常に尊敬の眼差しを向けられていたし、彼の周りにはいつも自然と人が集まるようになっていた。それがスーパースターにとって輝くための大事な要素でもある。たとえ英語の言葉が完ぺきでなくてもヒロはいつも誰かに話しかけられ、懸命にボディランゲージを交えながらコミュニケーションを取っていた。それだけ人を引き付ける重要な要素をもっているのだろう。私は自分が退任するまで2010年までの3シーズンだけ、彼と同じユニホームを着たが、少なくともあと10年は一緒にチームを支え合いたかったね」

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.