最初に考えるべきは、自社商品の技術が、市場ではどのような普及状況にあるのか、ということだ。ポイントは、自社商品の視点ではなく、あくまで市場の視点で考える、ことである。
例えば、電気自動車・テスラのケースで考えてみよう。
テスラのターゲット市場をカリフォルニア州シリコンバレーとして考えると、既に充電ステーションも充実しており、消費者にとっては現実的な選択肢になりつつある。つまりキャズムを超えようとしている段階だ。しかしターゲット市場を米国の他の地域として考えると、充電ステーションはそこまで普及していないので初期市場にとどまっている。ターゲット市場を日本として考えると、そもそも充電ステーションをこれからつくろうとしているので初期市場に入ろうとしている段階だ。
このように、市場でどのような状況にあるのかを考える際に使うのが、技術市場モデル(TMM: Technology Market Model)だ。
連載第1回で紹介した「イノベーター理論」では、普及段階に応じてユーザーをイノベーター、アーリーアドプター、アーリーマジョリティ、レイトマジョリティ、ラガードに分類して考えた(関連記事)。TMMもこれに近い形で市場を分類して考える。市場での商品の普及段階により、顧客の行動は異なるし、必要なビジネスの対応も変わってくる。
ここを見誤ると失敗してしまうのだ。
例えば2014年、アマゾンは新しいスマホ「Fire Phone」を発売した。アマゾンにとってFire Phoneは新商品だ。そこでアマゾンはさまざまな新機能を搭載してアピールした。しかしこの時期、スマホは既に広く世に普及しており成熟市場になっていた。目新しい機能だけで選ぶ顧客は既に少数派だったのだ。2015年、アマゾンはFire Phoneの販売を打ち切ることになった。
本来ならば、2014年時点でスマホは成熟市場なのだから、目新しい新機能ではなく、既存のスマホ顧客が乗り換えやすい施策を考えるべきだったのだ。
このように、最初の段階で、自社の商品やサービスがターゲットとする市場の中でどのような普及状況になるのかを理解することが必要だ。
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