事実上の廃線復活 可部線延伸から学ぶこと杉山淳一の「週刊鉄道経済」(3/4 ページ)

» 2017年03月03日 07時30分 公開
[杉山淳一ITmedia]

今となっては痛恨のミスだが……

 可部〜三段峡間の廃止決定は、振り返ってみれば問題があった。廃止区間の決定方法だ。横川〜可部は電化区間、可部〜三段峡は非電化区間。この2つの区間を比較して、非電化区間を切り捨てれば区切りがいい。これはJR西日本の列車運転の都合に過ぎない。本来は、区間ごとの輸送密度や需要予測を行い、本当に乗客がいない区間、乗客が見込める区間を見極めるべきだった。

延伸区間の駅は2つ。可部駅寄りの河戸帆待川に河戸の文字が残る。終着駅はあき亀山。旧河戸駅より400メートル先にあるという 延伸区間の駅は2つ。可部駅寄りの河戸帆待川に河戸の文字が残る。終着駅はあき亀山。旧河戸駅より400メートル先にあるという

 廃止された約46キロメートルの沿線は、観光の拠点となる三段峡駅もあれば、可部駅の隣の河戸駅のように住宅が多い地域もある。もちろん、乗降客がほとんどいない駅もある。河戸駅付近の人々は、もとより電化区間の延伸と増発を求めていた。廃止反対運動にも力が入っていた。JR西日本の大ざっぱな廃止区間決定によって乗客が見込める区間も廃止してしまった。

 しかし、河戸駅周辺の人々はあきらめなかった。可部〜河戸間の電化延伸の希望は継続し、粘り強く交渉を続けた。そして、とうとうJR西日本から「広島市から要望があれば検討する。ただし費用は地元負担」という条件を引き出した。残念ながら費用の捻出が叶わず、この区間も含めて廃止されてしまう。しかし、広島市と住民との検討会は継続した。

 2003年の廃止から4年。住民に追い風が吹いた。2007年に「地域公共交通の活性化及び再生に関する法律」が施行された。自治体による地域公共交通総合連携計画の作成と事業認可の特例を定めた法律だ。この法律に基づいて、2008年にJR可部線活性化協議会が設置された。メンバーは住民代表、広島市、JR西日本、競合となるバス事業者だ。オブザーバーとして国土交通省も参加した。

 協議の結果、2013年に新線として可部線の延長区間を整備することで合意した。総工費は約47億円。広島市と国が建設費の大半を負担して建設。JR西日本は無償で借り受ける。

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