廃線観光で地域おこし 「日本ロストライン協議会」の使命杉山淳一の「週刊鉄道経済」(2/4 ページ)

» 2017年04月14日 06時20分 公開
[杉山淳一ITmedia]

日本ロストライン協議会の活動とは

 日本ロストライン協議会の目的と活動内容については、協議会規約に明記されている。

第2条 この協議会は、全国の廃線軌道のレールを残して活用し、事業化または計画をしている各種団体などが、相互連携し、交流や研修並びに情報交換等により、廃線利活用事業の発展を目指すことを目的とする

第3条 この協議会は、前条の目的達成のため次の事業を行う。

 (1)会員相互の交流並びに、情報交換に関すること。

 (2)廃線利活用事業の運営に関わる諸問題の改善並びに、調査研究に関すること。

 (3)廃線利活用事業の運行に関わる各種技術の研修並びに、指導にかかわること。

 (4)各関係機関との連絡及び、情報交換に関すること。

 (5)廃線利活用事業のPR活動に関すること。

 (6)その他、協議会の目的達成のために必要な事業。

 廃線軌道を残して「活用し」という部分が主目的だ。「復活」や「復元」ではない。だからこそ神岡のように、線路で「レールマウンテンバイク」を走らせて遊ぼう、という発想ができる。レールマウンテンバイクは、他の地ではレールバイクと呼ばれる。バイクはオートバイではなく、自転車だ。線路の保守点検用に使う「軌道自転車」をヒントに作られた。

 日本ロストライン協議会の設立総会には12団体が出席、署名した。郵送で署名した3団体と合わせて、15団体で発足となった。参加団体と簡単なプロフィールは次の通り。

岐阜県 NPO法人 神岡・まちづくりネットワーク

2006年に廃止された神岡鉄道の線路2.9キロメートルでレールマウンテンバイクを運営。5年間でほぼ全線の約20キロメートルに拡大し、小型動力車で牽引するトロッコタイプも導入する計画。

宮崎県 高千穂あまてらす鉄道株式会社

2008年に廃止された高千穂鉄道の線路で、エンジン付きトロッコ「スーパーカート」を運営する。日本一高い鉄橋として知られていた高千穂鉄橋を通過する。現役時代よりスリルが増した。

秋田県 NPO法人 大館・小坂鉄道レールバイク

2009年に廃止された小坂鉄道の大館市側の線路でレールバイクを運営。電動車でけん引するトロッコタイプもある。約1.8キロメートルと約2キロメートルの区間があり、時期によって替わる。


 上記3団体が幹事となり、神岡・まちづくりネットワーク代表が会長に、高千穂あまてらす鉄道と大館・小坂鉄道レールバイクが副会長に承認された。

北海道 NPO法人 北海道鉄道遺産ネットワーク

北海道の歴史的な鉄道車両、鉄道施設を保存、活用する14の団体の集まり。車両保存を主とする団体のほか、レールバイクやトロッコ列車を運行する団体もある。

秋田県 小坂町 小坂鉄道レールパーク

小坂鉄道の小坂町側で鉄道博物館を運営する。小坂鉄道の車両を保存展示するほか、旧小阪駅構内でレールバイクやトロッコを運行。ブルートレインの客車に宿泊できる。

岩手県 岩泉線レールバイク(和井内刈屋地域振興会)

2014年に廃止されたJR東日本の岩泉線でレールバイクを運行する。旧岩手和井内駅〜旧中里駅間の片道3キロメートル。2人用、4人用、電動アシスト付きタイプがある。

石川県 なつかしの尾小屋鉄道を守る会

1977年に廃止された尾小屋鉄道の車両を保存する。ディーゼルカーは動態保存で体験乗車可能。群馬県の鉱山鉄道で活躍したトロッコ車両を譲り受け、線路を敷設して運行する。

岐阜県 NPO法人 ふるさと谷汲(庭箱鉄道)

ふるさと谷汲は2001年に廃止された名古屋鉄道谷汲線の谷汲駅構内と車両を保存。庭箱鉄道は岐阜県などで15インチゲージのミニ鉄道を運行する団体で、谷汲駅の車両運転体験イベントを主催する。

岐阜県 小坂森林鉄道研究会/愛知県 NPO法人 愛岐トンネル群保存再生委員会

旧国鉄中央本線の新線建設によって廃止となった旧線の高蔵寺〜多治見間に存在する多数のトンネルを発掘、研究する。4つのトンネルを持つ1.7キロメートル区間を整備し一般公開イベントを実施している。

三重県 一般財団法人 熊野市ふるさと振興公社 入鹿温泉ホテル瀞流荘

紀州鉱山が運行していたトロッコ軌道を再利用し、入鹿温泉と湯ノ口温泉の約1キロメートルをバッテリー機関車とトロッコ車両で結ぶ。レールマウンテンバイクも運行している。

鳥取県 倉吉観光マイス協会

1984年に廃止された国鉄倉吉線の打吹駅跡地で倉吉線鉄道記念館を運営する。付近の廃線跡は遊歩道として整備。線路が残された場所も多く、トンネルを通るトレッキングツアーを開催している。

岡山県 美咲町(片上鉄道保存会)

1991年に廃止された片上鉄道の吉ヶ原駅構内を再利用し、柵原ふれあい鉱山公園として整備。動態保存車両を運行する。2014年に黄福柵原駅を新設し、運行距離は片道400メートルになった。

福岡県 赤村トロッコの会

建設中止となった国鉄油須原線の未開業区間を転用し、観光鉄道として赤村トロッコ油須原線を運行する。片道約1.7キロメートルを往復する。乗降場が平成筑豊鉄道の赤駅に隣接している。

NPO法人 J-heritage

廃鉱、廃線、近代建築などの産業遺産(ヘリテージ)を記録、紹介する。産業遺産の見学ツアー「ヘリテージ・ツーリズム」や、産業遺産関連のイベントを開催している。


日本ロストライン協議会、調印式 日本ロストライン協議会、調印式

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.