廃線観光で地域おこし 「日本ロストライン協議会」の使命杉山淳一の「週刊鉄道経済」(3/4 ページ)

» 2017年04月14日 06時20分 公開
[杉山淳一ITmedia]

日本鉄道保存協会と日本ロストライン協議会

 廃止路線や引退車両を保存する団体の組織として「日本鉄道保存協会」がある。こちらは1991年の創立から26年の活動実績があり、正会員は鉄道保存団体や鉄道会社など46団体。賛助会員は鉄道雑誌出版社、旅行会社など10団体。顧問には大学教授、博物館館長、公益財団法人交通協力会会長が名を連ねる。

 日本鉄道保存協会の目的も「歴史的鉄道車両、構造物、建物等を保存している団体が集い、相互に情報を交換し、将来にわたる保存・活用を推進することを目的とする(第2条)」だ。「活用」の文字が入る。しかし、活動内容を拝見すると、現役時代の鉄道にこだわった、学術研究的な意味合いが強そうだ。

「おくひだ1号」は無料体験乗車会として、奥飛騨温泉口駅〜神岡大橋駅間2.9キロメートルを5往復した。車両の動態保存に成功した証しだ 「おくひだ1号」は無料体験乗車会として、奥飛騨温泉口駅〜神岡大橋駅間2.9キロメートルを5往復した。車両の動態保存に成功した証しだ

 日本ロストライン協議会の参加団体の共通点を探すと「乗って遊ぶ」になる。実際の鉄道車両もあるとはいえ、トロッコ、マウンテンバイクなど、現役時代の鉄道の姿にとらわれない形だ。こうした施設で遊ぶ体験を、日本ロストライン協議会では「ロストライン・ツーリズム」と呼ぶ。設立総会後の事例発表会では観光庁も参加し、日本の観光市場の変遷、国の取り組みを紹介しつつ、ロストライン・ツーリズムを応援したいと結んだ。

 日本鉄道保存協会は鉄道ファンを満足させる知識が豊富。日本ロストライン協議会は商売上手、といったところか。日本鉄道保存協会と日本ロストライン協議会はすみ分けができている。廃線にかかわる団体は運営方針によって加盟を選択すればいい。あるいは両方に参加する場合もあるだろう。

 例えば、日本ロストライン協議会に参加した北海道鉄道遺産ネットワークの中で、いくつかの所属団体が日本鉄道保存協会に名を連ねている。片上鉄道保存会は日本鉄道保存協会で、施設を保有する岡山県美咲町は日本ロストライン協議会だ。小坂鉄道保存会は両方に参加している。

 日本ロストライン協議会の幹事団体「神岡・まちづくりネットワーク」の関係者も「おくひだ1号」の復活を機会として日本鉄道保存協会への参加を検討したいという。それぞれの会が得意な役割を生かして、お互いに協力し合う関係になってほしい。

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