松原: まず、頭の中で「こんな形はどうかなあ」「こんな風にすればいけるかなあ」と考えました。次に、試作品をつくりました。なぜ試作品をつくるかというと、実際につくってみないと球状の中に部品が入るかどうかが分からないから。
土肥: 設計の段階ではよく分からないので、実際につくってみると。
松原: はい。でもザクの場合、なかなかうまくいきませんでした。中に入れなければいけないパーツがどうしても入らなくて、はみ出てしまうんですよね。パーツが邪魔になるので、ある部品を右に移動させると、違う部品が邪魔になったり。そうした作業を繰り返したところ、ある日「これでいける!」と感じて、再び試作品をつくりました。でも、ダメ。中にパーツが入らなかったんです。
通常であれば、原型をつくって修正を加えて、終了――。といった流れが多いのですが、ザクの場合は、最初からつくり直す作業が発生しました。部品の形状を変えたり、削ったり、向きを変えたり。2度目の試作品で完成すると思ったのですが、それでも中にパーツが入らなくて。
土肥: バンダイのガシャポンは月に30〜40アイテム出ると聞きました。松原さんはザクの開発だけをしているわけではないですよね。それなのに開発に時間がかかったら、周囲から厳しい目があったのではないでしょうか? 通勤途中に「あの部品を前にもってきて、次にあの部品をちょっと曲げて……」といったことばかり考えていたとか。
松原: ご指摘のとおり、ザクのことばかり考えていました。発売日は決まっていたので、○月○日までには完成しなければいけないといった締め切りがありました。ああでもない、こうでもないと部品を組み替えながら「次、中に部品が入らなかったらヤバいぞ」とプレッシャーを感じながら開発していました。
土肥: で、完成した?
松原: 2度目もうまくいかなくて、3度目の試作品をつくりました。結果、中にすべてのパーツが入ったんですよ。
土肥: おめでとうございますー。で、完成?
松原: いえ、まだです。中にすべてのパーツが入ったので、当初予定していた大きいサイズのモノができました。でも、それだけでファンを満足させることはできません。驚かせるためにはどうすればいいのか。頭頂部とパイプ基部を開くようにしたほか、モノアイを左右に動かせるようにしました。
なぜこのようなことをしたかというと、ガンダムの関連商品はたくさんあるから。例えば、プラモデルひとつとってもたくさんの商品が出ていますよね。そういった中で、どのようなギミックを搭載すれば、ファンの人たちに「新しい」と感じてもらえるのか。新しい要素があれば、多くの人は「欲しい」と感じるはず。というわけで、ガンダムファンに喜んでもらえるようにギミックを加えたほか、外装だけでなく内部のメカニック部分までディテールを再現しました。
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